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□今日地球が滅びる場合
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「あのですね、さわださん」
「なあに、ごくでらくん」
「きょうはすこし、だいじな話があるのです」
そういってきみは、辛気臭いくらい仰々しく今日ちきゅうが滅びる話をした。
(おれにはすこし、むつかしかったけど)
今日地球が滅びる場合
「例えばです、例えばの話なんですけど、今日地球が滅びるとするじゃないですか?」
「うわあ、獄寺くん。それはランボレベルの発言だよ」
茶化すと、獄寺くんは一瞬イラッとした顔をした。
(本気で話してる証拠だ)
手榴弾をぶっ放すランボなら分かるけど、あの真面目な獄寺くんが地球が滅びる話を真剣に話す姿はなんだか滑稽で、わらえてくる。
「あの、おれ一応真剣に話してるんですけど?」
「知ってますけど?」
「ですから、今日、地球が滅びるとするじゃないですか、」
「聞いたって」
「そしたら、明日には地球はないわけじゃないですか?」
「そりゃ、滅びちゃったんだもんね」
「そしたら俺は、貴方を幸せにしたいんです」
「地球が滅びる話はどこいっちゃったの?」
「つまに地球が滅びたら、俺らはいなくなっちゃうじゃないですか。生きられないんだから、」
「…………」
「そうすると、俺は貴方を幸せにできないんです」
なんとなく。なんとなく、獄寺くんが言いたいことが分かってきたる
たまに、すごくたまに、彼はとても難しいことを考えて、俺が思いもしないようなことまで考えて、必死で答えを見つけようとする。
今がまさにその状況なのだ。
ありもしない状況を勝手に考えて、その状況に怯える。
「ようするに、今日地球が滅びたら俺は幸せじゃないと」
「そうです」
「それで、何してくれるの?」
「……へ?」
「地球が滅びるその瞬間,獄寺くんは何してくれるの?俺に」
「…………」
あーあ、黙っちゃったよ。
さすが、ヘタレ!
俺からは絶対に言いたくなかったんだけど、地球が滅びる瞬間まで幸せでいたいでしょ。やっぱり。
だからこまのヘタレに言っとかないと。
「キスしてほしいな、獄寺くんに、俺は」
「へっ?」
「思いっきり深いのがいいね」
「……沢田さん?」
「地球が滅びる瞬間までキスなんて、贅沢じゃない?」
獄寺くんはふんわりと笑った。
(さっきまでヘタレな顔してたのにずるい、ホントに)
「俺、地球が滅びるまで貴方には敵わない気がします」
「いまさら?」
「ははっ!今、超幸せです、俺!」
熱烈な告白も聞けましたしね!なんて笑う獄寺くんに、全身でぶつかってやった。
(今でも、じゅうぶんしあわせなんて、絶対に言ってやんない)
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