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□涙の雫
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僕も君に渡したい。
君がいつもくれるように……。
涙の雫
「ねぇ、泣いてるの？」
僕がそう聞けば、君はいつでも涙を拭う。
そして、返ってくる言葉はいつも同じ。
「…っ、泣いてなんかねぇよ？」
真っ赤な目元。
濡れた頬。
掠れきった声。
痛い。
すべてが僕の胸を締め付ける。
だからいつでも泣くのは僕。
君は驚いて、いつも大切に僕を抱き寄せる。
なんで我慢するの？
泣きたいってのは君の感情(もの)だろ？
「…っ……ねぇ、泣いてるの…？」
泣いてるのは、僕。
泣いてるのは、君の心。
君が泣くのを我慢するから、僕に痛みが渡ってきたんだ。
こんなのいらないよ。だってこれは、君の痛みだろ？
だから、君に返すよ。
僕は思い切り目の前にある顔を殴った。
驚いたのか、はたまた痛いのか、彼は目を白黒させた。
「…今痛いのは、僕が殴ったから。だから、」
こうでもしなきゃ、君は泣かない。
否、僕の前だと泣かない。
歪んだ顔の目元から、涙が一雫落ちた。
「今泣いてるのは、痛いからだよ」
覆い被さってきた体は僕なんかより大きいのに、小さな子供のようだった。
「…ごめんね」
優しさって何なのか、僕にはよくわからない。
きっと君がいつもくれるものがそうなんだろう。
君に会うまでいらなかったし、知りたくもなかった。
けど、
今は、とても知りたいんだ。
君に優しさあげたいんだ。
君がいつも僕にくれるように。
「…君は僕に、」
僕も大きな背中に手をまわし、抱きつき返してみた。
「優しすぎるんだよ」
涙の雫
泣きたければ泣けばいい。
我慢しないでもっと感情を出せばいい。
そうじゃなきゃ、きっと優しさなんてあげられないから……。
【あとがき→】