「お主は何者でござるか?」楓の言葉に安心したらしく、猛は自分の過去を話し始めた。「…僕は元々普通の人間だったんです」そこで猛は自分が元大学院生であったこと、ある日謎の組織に連れ去られ、改造手術を受け改造人間になってしまったこと、しかし自分以外にも同じ人達がいて、その人達とともに組織に立ち向かい壊滅させたこと、猛以外の人達は 今どこにいるか分からないことなどを簡単に話した。「…以上です。信じてくれますか?」「俄かには信じがたいが、あの真剣な眼差しが嘘をついてると思うか?刹那、楓」真名が意見を出した。「いやいや、信じるしかないでござろう?」「現に魔法や気、吸血鬼なんてものもあるからな」「魔法?気?吸血鬼?」猛は混乱状態に陥った。何がなんだかさっぱり分からないからだ。「おい、二人とも、本郷先生が話についてきてないぞ?」「あ!すいません。本郷先生が話してくれたんだし、私達の事も話さなくてはなりませんね」それから猛は刹那からこの学園で起きたことなどを話した。魔法や気を持つ者達、更には吸血鬼又は悪の大魔法使い(実は良い人)のことまで。「…以上ですが、信じてくれますか?」内心少し非現実的ではないか?と思った猛だが、まさかそんな嘘つくわけないと思って信じることにした。「…あれ?てことは今日は見回りしなくていいんですか?」「ああ、それなら今から行くとこですよ。…まあ皆さんを運んでからですが…」刹那の視線の先には酔いつぶれた皆がいた。
「刹那さん、魔物っていうのはどのくらいの確率で現れるんですか?」「そうですね、下級の魔物ならよく現れますが、強いレベルになるほど魔物の出現率が低くなります…あと本郷先生、私達の方がよっぽど年下なんですから、敬語なんて使わなくてもいいですよ」「い…いえ、こういった性格なものですから、すいません」頭を下げる猛。確かに彼が敬語を使わなかった人は親かあと2人くらいである。その2人が今どこにいるかは分からないのだが。「い…いえ、別に気にしなくても」「予想よりも律儀で優しい人でござるなぁ」「まあな。だが本郷先生、本当に遠慮なんていらないぞ?私達はもう先生のことは100%味方だと思っているしな」年上にタメ口を聞くこの2人もどうかと思うが…「…と、どうやらそんな話をしてる場合じゃないな」「…え?」猛は上を見た。そこには3bはあろう。所謂「魔物」がいた。「本当に本当なんだ…」「!?…来ますよ!」初めての戦いが始まった。
その魔物はとてつもなく速く、真名でも捕らえきれない。「くそ!速いな!」猛はどうすれば良いのか分からないので傍観「本郷先生!!手伝って下さい!」「あ、はい!」猛は走り出した。そのスピードは楓よりも速い。しかし、「何追っかけっこしてるんですか!!」猛の足でも追いつかない。すると、「また、この力を使うのか…」そう呟いた猛は自身の服を掴み腹部分を隠すようにした。その後元に戻すと、そこには…「ベルト?」そう言ったのは刹那。次の瞬間、「「!!?」」見る見るうちに戦闘服のようなものを身に纏い、1秒とかからず「変身」した 。「あれが、本郷先生の力…」今度のスピードは段違いで、すぐさま魔物に追いついた。魔物が余裕しゃくしゃくでなければまだ勝機があったことだろうが、気を抜いた時点で今の猛、「仮面ライダー」から逃れられるはずがなかった。「トオッ」猛はジャンプし、魔物の背中にある翼をもぎ取った。呻き声とともに落ちていく魔物は陸に落ちた。続いてパンチが繰り出される。猛のパンチ力は凄まじく、パンチが魔物に当たる度にその箇所が拳の形に歪む。そして、「ヤアアアアアアア!」跳び蹴りが繰り出された。最早原型を保ってない魔物は幽と消えた。「…」猛は駄目だ。と思った。また怖がられる。クビか…と。しかし、「…凄い!凄いじゃないですか本郷先生!!」「拙者、驚いたでござるよ」「近接格闘だけなら最強かもな」恐らくタカミチが見たのは「かなり前」のデータだろう。もう既に猛の戦闘力はパンチだけでもその時の必殺技を遥かに凌駕しているのだ。「…皆さんは怖くないんですか?」こんな化け物がと言おうとした瞬間、刹那が口を人差し指で塞いだ。「言ったでしょう?自分を蔑んだらいけません!」「あ…」「それにあんなのがウヨウヨしてるってのに怖がるわけないでしょう?」優しく微笑んだ刹那。「そうですね」つられて猛も笑った。しかしそれを見ている少女が一人。あと不気味な人形が一つ。「ほう。ジジイめ、私に秘密であんな面白い奴を連れてくるとは…」すぐさま飛んでく。「む?…お、来てしまったようでござるな」来てしまった。その言葉に真名も刹那も寒気がした。今一番来てはいけない人物(?)が来たということが分かったからだ…「お前か‥今日からぼーやのクラスの副担任を勤めるとかいう奴は…」「あなたは…」猛の頭の中で記憶と生徒名簿が映し出された。「あ!不登校のエヴァンジェリンさんですね!」ずっこけた
「アホか!!今日はたまたま休んだだけだ!」「でも…ってことは風邪をひいたんですか!?大丈夫なんですか!?」猛はすぐさまエヴァの元に走った。「なっ!?」額をエヴァの額にくっつけたのだ。物凄い赤くなったエヴァ。「あ!やっぱ熱い!駄目ですよ!今すぐ帰って寝て下さい!」エヴァを回れ右させた猛。そのまま歩き出すエヴァだが、「って違うわい!」すぐさまノリツッコミができるまで回復した。………… 「すると、ほう。なかなかの面構えだ。いいぞ、その純真無垢な瞳、どうだ?この私に魔法を教わりたくはないか?」「あなたが素晴らしい魔法使いだなんて驚きました。10歳くらいなのに頑張ってるんですね」その言葉にエヴァが怒った。「話を聞け!私はもう600年以上生きているんだぞ!」「まあまあ、落ち着くでござるよ」楓に持ち上げられて「離せ!離せ!」と言っているその姿を見るとどうしても600歳には見えないのだが信じるしかない。「あの…魔法を教えて下さるのは本当に嬉しく思うんですが、申し訳ありません。やはり迷惑でしょうし、僕も今の自分で満足ですから」するとエヴァがきょとんとした顔でこちらを見た。と思ったら笑い出した。「クックック…ぼーやとは大違いだな。ではこういうのはどうだ?本郷 猛よ、私のものに」「はいはいその辺でやめるでござる」楓がエヴァの口を塞ぐ。「むぐ?んー!」その光景を見て猛はまた笑った。「んんんんー!(笑うなー!)」「すいません本郷先生、マスターがご迷惑をおかけして…」振り向いてみるとそこには緑色の髪をした耳飾りらしきものをつけた静かなオーラを纏った女の子がいた。「マスター?」「はい。エヴァンジェリンは私「絡繰茶々丸」のマスターです」絡繰 茶々丸とは変な名前だなと思ったらそれを悟ったのか「私はロボットですから」と付け加えた。「ロボットですか…って…え??」今度は刹那が「本郷先生、茶々丸さんは本当にロボットなんですよ?」正直信じがたい。「ならこれで信じてくれますか?」そう言った茶々丸は猛の手を取り、自身の胸に押し付けた。(ムニュ)年の割に大きい(いくつ?)感触を猛の手は掴んだ。だが、「…あれ?心臓の音が聞こえない?」「分かりますか」「本当にロボットなんですか…」「納得していただけたなら…」こんな技術あるんだったらこのロボットに恥じらいという機能を付け加えて下さい と思った猛だった。「あ…3人とも、寮帰らなくていいんですか?」「「あ!!」」あ〜あ
「エヴァンジェリンさん、この人が本郷先生、「仮面ライダー」の戦闘力データです。昨日の戦いを傍観していた茶々丸に記憶させたので一応大体のデータは取れました」「おお、早いな。ハカセ」ハカセと呼ばれたのはクラスの一員、葉加瀬聡美である。「ふむふむ…!…凄いな…」「ええ、驚きました。まず跳躍力ですが、60bを軽く超えました。後このダッシュ力は計算すると100bを約0.5秒で走りそしてそのパンチ力は40d。キックの強さは150dですが…一番驚いたのが最後の跳び蹴りです。何と約300dですよ。ネギ先生の風楯でも耐えられないんじゃないですか?」エヴァはますます興味が湧いてきた。「魔力も気も使えない者にこれだけの力があるとは…本郷 猛め、興味をそそる奴だよ…」エヴァはまた何かを企んでいた。一方その頃。
「…つまりメンデルという人はこのえんどう豆を使った実験で遺伝というものを確かにしようとしたわけです」「はい!本郷先生、質問です!」普通に授業をしていた猛。もうすぐ今日の授業も終わりに差し掛かっていた。その時、「本郷先生!!今日カラオケ行きませんか!?」椎名 桜子の言葉、まあする事も無いのだが、あまり人前で歌うのは得意ではない。「あ、僕はカラオケは苦手で…すいません」頭を下げて教室を出ようとするが、「えー?いいじゃん!歌わなくても雰囲気だけで楽しめるよ?」恐らく猛の印象はインドアな人と思われているらしく、少しでも交流を深めようという桜子の思いやりなのだろう。まあ桜子の誘いは九分九厘カラオケ行きなのだが。その思いやりを悟ったのか「じゃあ、僕も行かせていただきます」笑顔で答えた。最近の歌はよく知らないが、何とかなるだろう。(絶対マイクを向けられるだろうから)
「よ〜し!まだまだ歌うよ〜!」既に4時間経過。クラス全員が必ず一曲は歌うという暗黙のルールがあるので最低でも2時間以上はいるが、桜子が既に10曲は歌っている。それに対して誰も何も言わないのもこのクラスの良いところかもしれない。「凄いですね。あんなに一気に歌ってよく疲れませんね」「桜子あれでもラクロス部にも入ってるから、スタミナと力は妙にあるんだよね」答えたのは桜子の親友の一人、柿崎 美砂である。「柿崎さんもコーラス部に入っているんですから歌えばいいんじゃないですか?」「あはは。桜子があれだから…」「…本当に楽しくて、いいクラスですね」猛はこの日初めて「楽しみ」を知ったのだった。

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