「ぐぬ…」ディケイドからの変身を解除してしまった士はかなりのダメージを受けたのか起き上がることすらできなかった。「士先生!」ネギが叫ぶ。しかしすぐ目の前には魔物の大群がいるため駆けつけることが出来なかった。「ディケイド…お前の最後だ!」「させるか!茶々丸!」「はい」一瞬の出来事だったため、魔物のボスも反応が遅れた。「大丈夫ですか?士さん」士を助けたのは出席番号10番。絡繰 茶々丸だった。そしてその茶々丸に命令したのが「大丈夫かぼーや達、助けに来たぞ」エヴァンジェリンだった。「師匠!」「え〜っと…エヴァンジェリンだな?」「そうだ」「礼を言うぜ…助かった」するとエヴァンジェリンは少し小馬鹿にしたような笑みを浮かべて「油断するからだ。愚か者め」と言った。「ふん…」士はそれでも追ってくる魔物のボスを無視する気は無いらしい。「離してくれ、茶々丸」「しかし…」「あいつは俺がぶっ倒す」そう言うと茶々丸は心配そうな顔をしたが士を離した。これがネギだったら死んでも離さなかっただろうが。「…変身!」士はもう一度ディケイドに変身した。しかし今度は違った。「確か魔物とかほざきやがったな…ならこいつだ!」ディケイドはライドブッカーから一枚カードを抜いた。「カメンライド ヒビキ!」士が変身したのは仮面ライダー響鬼だ。「アタックライド オンゲキボウ」全ライダーの中でもスペックが高い響鬼。「ぐはっ!」音撃棒が相手に直撃した。だが。「…何!?」「…ふん」少ししか傷がついていない。「終わりだ!」魔物の腕が光る。「!」「死ね!ディケイド!」「ぐはぁっ!」またもや変身を解除してしまった士。「うわぁぁぁぁ!」崖から崩れ落ちていった。「士先生!」「士さん!」ネギ達と茶々丸の声が聞こえたがすぐに聞こえなくなった。




………「…ここは…」目を覚ますと見知らぬ場所。「目は覚めたか?」声のする方を見るとそこにはエヴァンジェリンがいた。「…エヴァンジェリンか」「だから何だ?」「俺はどうして助かった?」「お前が地面に叩きつけられる寸前に茶々丸がキャッチしたんだ」「そうか…」……「あれからどうなった?」士はとりあえず感謝よりも疑問をぶつけた。「…魔物の数があまりに多すぎた。不本意だが、逃げてきたよ」「逃げてきたって…ここは大丈夫なのか?」「いくら奴らでもここまでは追ってはこれんだろ。ここは私の別荘なんだからな」「別荘だからって…」「どうやらやられたショックで記憶もぶっ飛んだらしいな…私の別荘は異空間にできているんだ。安心しろ。誰も追ってはこれんよ」「そ…そうだ!夏ミカンは!?」先程から姿を見せない夏海。一体どうしたのか。「夏ミカンは…連れて行かれたよ。奴らに」「…嘘だろ?」言い知れぬショックが士を襲った。「本当だよ…私が付いていながら…すまなかった」頭を下げるエヴァンジェリン。彼女の性格からすると決して自分から謝るような者ではない。そのエヴァンジェリンが頭を下げるのだからそれほど申し訳ないと思ったのだろう。「〜!?」士はすぐさま立ち上がった。「どこに行く?」「決まってるだろ!夏ミカンのところだ!」「お前に何が出来る?」「んなこと知るか!」「ならば何故行く?」「助けにいくためだ!」「勝てんのにか?」「…っ!」士は内心自分が情けなく思えた。「…士。夏ミカンはな、連れて行かれる時、何て言ったと思う?」「…何だ?」「『私よりも士くんをお願いします』…そう言っていたよ」そう言われた瞬間。士の目から涙が零れ落ちた。「…っ!何が仮面ライダーだよ…!仲間1人守れねぇで…何が正義のヒーローだ!?」エヴァンジェリンは少し優しい笑みになって言った。「今から強くなればいい。お前ならできるよ」と。「…」それを見ていたネギ達は何も言えなかった。                   「離してよ!何する気なの!?」夏海は魔物たちのアジトにいた。「ディケイドはまだ生きているな?」「…それが何?」「お前を捕まえればきっと奴は来る。よほど大切だろうからな」「…士くんは、あんたになんか負けない…絶対!」                   「士さん」ネギが話し掛けてきた。「何だよ…」「…僕らで良かったら力を貸します。何でも言って下さい」「じゃあ…」
「…?」「こんなこと信じられるか?」それから士は、ネギ達を集め、正直に全てを話した。この世界に来たのはつい2日前だということ。この世界は自分からして、「アニメの世界」だということ。本当はこの世界には来るはずがなかったということを。「…」ネギ達は黙って聞いていた。「…以上だが、何か質問は?」「…それが本当なら驚きですね」「本当だよ」「まさか私達が二次元だったとはね…」「信じられるか?」士のその言葉を聞いて、ネギは少し考えてから言った。「俄には信じがたいですが、それなら今までの士さんの不可解な行動も話が繋がります。…信じますよ」「…そうか…」士少し笑みを浮かべ、立ち上がった。「行ってくるよ…」「士先生!…勝てないのに…どうするんですか!」「分からないが…行くしかねぇんだよ」「士」その時エヴァンジェリンが士を呼び止めた。「…ぼーや達も連れていけよ?」「…いいのか?死ぬかもしれないぞ?」しかしネギの返答は、「任せて下さい!絶対に夏ミカンさんを助けましょう!…皆で!」すると皆も「覚悟はできてます」「大丈夫やって!」「ま…行くしかないもんね!」「そうでござるな」「もちろんアル!」そう言った。「お前ら…」「フフ…」エヴァンジェリンは再び微笑んだ。「…ありがとう」士は心から感謝した。                「ディケイド…来たか」魔物たちのアジトになっていた麻帆良学園。「士くん!」そこには歓喜の涙を浮かべた夏海がいた。「心配かけたな夏ミカン。もう大丈夫だ…」「ディケイド…今度こそ死ね!」「やられるのはお前だよ…変身!」士は変身した。「くらえっ!」それはディケイドを一撃で倒したあの技だ。「…お前らに賭けたからな…」「ガァッ!」魔物の「魔喚砲」がすぐそこまで迫っていた。「頼む!」取り出したカードはこれまでと違ったカード。それは「仮契約カード」だった。「アタックライド アスナ カグラザカ!」『ズガァァァァン!』「…直撃か」「士さん!」「あっけないな…ディケイド」「うう…」夏海は泣いた。その時。「…誰があっけないって?」「…な!?」「つ…士くん!」






そこにいたのは無傷のディケイドとネギ達。「上手くいきましたね!」「良かったぁ〜…助かった!」「さすが明日菜さんの『魔法無効化能力』は凄いですね〜」「まあね〜」それを見ていた魔物たちのボスは目を見開いて「信じられん…」と呟いた。「これが…この世界での士くんの力…」「行くか皆!」「おぉう!」そこからは最早戦争と言ってもいいほどの戦いだった。そして「アタックライド セツナ サクラザキ!」翼が生え、ライドブッカーソードモードが沢山になり一気に決着をつけた。「…最後だな!」残すはあと一匹、あのボスだ。「…ディケイド…これほどまでとは…!!」「後悔はあの世でしな!」「アタックライド ネギ スプリングフィールド!」「!」上空から、前後左右から、「雷だと!?」「はっ!」「ファイナルアタックライド dddディケイド!」ディケイドに雷と風がまとわりつく。「な…!!」「ヤアアアアアア!!」「お〜兄貴!あれこそ、士兄貴の兄貴との必殺技ですね!」「うん!」「名付けて、『雷の暴風ディメンションキック』…ッすね!」「長いな」「ネーミングセンス無いね」「…」そして…「ウガアアアアアアア!!!!」魔物は爆発した。                         「しかし…強かったですね〜今回の士くん」「俺の実力じゃない。あいつらのお陰だよ」士そう言ってネギ達を指差した。「でも…嬉しかったです。士くんが駆けつけてきてくれて」「…俺も元の世界に帰りたかったしな!」「…素直じゃないですね〜」夏ミカンは笑っていた。その時。「お前のこと話したら大泣きだったんだよ…士くんは」エヴァンジェリンが笑いを堪えながらも…堪えきれず大笑いして言った。「…士く〜ん!!!」「うわやめろ夏ミカン!離せ!」「そんなこと言わず!」「バカ!やめろ!」そのやりとりを見てまたネギ達は笑っていた。                    「その扉を開けたらお別れなんですね…」淋しそうにネギが呟く。「ああ。もうこの世界に用は無いからな」「じゃあ…さようなら」俯くネギ。そんなネギを見て士は一言。「ほら」手を伸ばした。「握手だよ…ほら!」すると…「はい!」満面の笑みを浮かべ、意外に強い力で握り返してきた。「…じゃあな」「はい」扉を開けかけ、士はもう一言。「…また、会おうな!」「…はい!」今度は皆が返事をした。
とある3日間の短いようで長かった士たちの話であった。

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