短編
□雨
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(…下らない会話が、嬉しい…)
でも、いつまでも雨の中に立っている訳にもいかず。
「先輩、とりあえずどこか入りません?」
「なんだおまえー、誘ってんの??」
「ばばばば馬鹿なこと言わないで下さいよ!!」
「冗談、冗談だよ半分。んじゃとりあえず傘」
そう言って、仲井は優希の手を掴んで歩きだした。
(っ…心臓イタイ!!手から、伝わっちゃう…)
状況に耐えられず、優希は口を開く。
声の震えを必死に隠しながら。
「あ、の、先輩…」
優希の呼び掛けに、んー?と振り向く。
その姿は小動物のようで…とてもかわいいのだけれど、生憎仲井は180近くあるので、優希は見上げる形になってしまうのだった。
「今更…傘買っても、あんまし意味ない気がします。それよりタオルと、乾いた服が欲しいです…」
「んん??」
(やだ、なんか意味わかんないこと口走っちゃった…)
仲井は少し考える素振りをしてから、満足そうに頷き、優希の手を引っ張った。
「なら、優希走れ!!」
「んぇ、ぅわっ…」
そう言って本当に走るので優希は転びそうになるが、そのたびに仲井の手が支えてくれた。
(ちょ、心臓保たないっ!)
こんなことされたら、期待してしまう。
仲井はわかってやっているのだろうか?と優希は恐ろしい気持ちになった。
「先輩、どこ行くんですかっ??」