短編

□雨
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ぽつ ぽつ ぽつ

ざあぁぁぁ…



その気持ちは雨のように緩やかに
気付けば激しく。


「やぁぁっ、降ってるじゃん…」
部活が終わり、優希が部室を出ると、雨が降っていた。
「傘、ない…」
どうしよう、と鞄を探ったが、入れていない傘が入っているはずはなく。

少し躊躇って、優希は雨の中に飛び込んだ。


(…やだ、結構冷たい…)


6月の雨はまだ冷たく、優希の体温をゆっくり奪っていった。

頭にかけていたスポーツタオルもぐっしょり濡れ、もはや意味をなしていない。

(もう、いいや…濡れていこう)


諦めてゆっくり歩いていると、後ろから声が降ってきた。


「あれ、優希?」
「!」


振り向いたそこにいたのは…


「仲井先輩…」
「なんだおまえーびしょ濡れじゃーん」
「そういう先輩だってびしょ濡れじゃないですか!」

優希が見上げた仲井の制服は、肌に貼りつくほど濡れていた。


「もしかして、学校からずっと傘さしてなかったんですか??」
「そうだけど?優希だって一緒だろー」
「風邪引きますよ?」
「馬鹿は風邪引かねんだよ。あ、じゃ優希もか」
「先輩と一緒にしないでくださいよー」


仲井は、優希が所属しているバレー部の部員だった。といっても、優希はマネージャーなのだが。

入りたてでまだ何もわからない優希に仕事を教えてくれたり、落ち込んでいたときにはさりげなくそばにいてくれたり…と、優希が好きになるには十分だった。
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