受験の御守り

季節の移り変わりは年を取るとともに早くなっていくような気がするが、俺が生まれてから通算14回目の春もノンストップで過去ってしまい、今現在は梅雨も明け初夏が手を振りこんにちわといったところだ。
さて、俺はもうすぐ通算14回目となる夏、つまり中学時代最後の夏を迎え撃つわけだが、気分は晴ればれとするどころかまた梅雨に逆走するかのようにどんより気味である。なぜかというと夏の長所はお盆を含めた夏休みであり、夏休みがあるからこそ夏なのだ。
だが、今年はそうもうかうかしてられない。
なぜかって?そりゃ決まってるだろ。中3で部活も印籠渡されちまった学生さんに待ってる人生最大の分岐点とはなにかーと考えれば容易に想像がつくはずだ。
そう、高校受験だ。
この夏休みは皆、受験に向けて勉学に性を出すため一番差がつく時期なのである。
要は如何にして夏を過ごすか、であり夏を怠惰に過ごした奴とそうでない奴とでは結構な差が生じ、高い受験ハードルに挑戦しようという俺にとってはなおさらで、だからこそ俺は今現在切羽詰まった状況にある。
では、この小説は一体どういう物語なのかー、簡単に言うと、受験を間近に四苦八苦してる俺、神谷龍弥が「ある物」との出会いによって受験を乗り越えようと決心する、少しSFちっくで、ちょこちょこ恋愛も挟んだりする汗と涙の感動物語なのだ!!
第一章

音というのは不思議なものであり、単純かつ複雑なものだなと思い始めた。
音というのは耳に聞こえるだけなのに、なぜ蝉の鳴き声はこうも暑いというボルテージを駆り立てるのだろうか?
実際、音が暑いわけではない。蝉が発する音が地球温暖化の原因ならば、真っ先に政府は蝉撲滅運動を推進するだろう。 そうではない。音に熱がこもってるわけではなく、蝉にはなんの罪もないわけで、鳴き声だけで周りの暑さが倍加してるような気がするのは単なる錯覚にすぎず、そうと分かっていても行き場のないイライラ感は蝉にぶつけざるを得ず、蝉にしてみてはえらい迷惑かもしれんがそんなことはどうでもいいなと、こんな感じでまとめておこう。
「あちーんだよ、チクショウめ。」
蝉と蛙の見事な2部合唱は、夏の始まりを告げる鐘の音となって村に響きわたり、それを聞いて人々は今年も夏が来たとある人はしみじみと、またある人は淡々と思うことだろう。
さて、蝉の鳴き声についての俺の概念を長々と語ったわけだが、この小説は蝉のこととは全くの無関係であり、これは悪魔で俺が今思ったことを思った様に綴っただけであることを一応確認しよう。この小説の内容は冒頭で話た通りだ。ま、あんな適当な紹介文あってないようなものだが。
なにも生物愛好者であるわけでもなく、哲学的なことを述べたつもりもない。こんなどうでもいいことを考えるほど退屈で、この村が平和的であることを改めて実感していたー、というわけだ。 蝉と蛙の発声練習を横に、そんなことを考えていると3時間目の終了を告げるチャイムが校内に鳴り響き、俺は机の上に配布された解答用紙をクシャクシャに丸めて鞄の中に押し込んだ。
「オッス、リュウ!テストの結果、どうだった?」
俺にヘラヘラ口で声をかけてきたコイツの名は浜崎である。
一応家も近いし幼稚園の頃から一緒に遊んでいた仲ではあるが、成績の方は悪い。入学当時から俺との成績の差は徐々に開き、今じゃ見事な落ちこぼれ組だと思っていたのだが…
「よくも悪くもないね。71点だ。誇れる数字じゃあない。」
それでも浜崎からは思わず息を飲むほどの点数なんだろうなと思っていた。
「かーっ!やっぱ頭いいなお前!完敗だ!」
別に頭がいいわけじゃない。普通よりややできるといったところだ。その証拠にクラスの平均点は62点。最近クラスの連中も確実に成績が上がってきている。俺もやや焦り気味なんだ。
「お前はどうだったんだ?」
躊躇なく聞いた俺がバカだった。次の瞬間、浜崎がいった数字に逆に驚かされることになる。

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