Plusα

□そして僕は木から落ちる
1ページ/29ページ


転勤族の父親に着いていき,アスランの転校も何回目となっていた。いい加減に編入手続きにも飽き飽きし,同じくらい引越にも飽きてきた。

それなら一人暮らしでもすればどうだろうと,彼の提案に父親は了承の意思だけを示した。
一人息子を自分の都合で連れ回すことに関して,彼の中では以前から思う所があったのだ。

そうしてこの街に戻ってきたアスランは,幾分落ち着いた気持ちで学校の門を潜った。

家から一番近いこの学校は,今時珍しく共学ではない。
学生の本分は勉学であり,最大の敵になる恋愛,即ち最大要素たる異性を排除したのである。

職業選択の自由を守るため,教師は男性だけというわけには行かない。
しかし誰が好き好んでむさ苦しい男子校などに来るものか。結果学内に人間の女は存在しない。

女性を怖がるナイーヴな男子の駆け込み寺と有名らしいが,正直ありがたい。
あまり人付き合いが得意でないのに,なぜか昔から異性から声を掛けられるのだ。


相手に失礼のないように断るのはやや骨が折れる。特に誰とも付き合わないことについて言及されると,長期戦を覚悟しなければいけなかった。

フリーだからと必ずしも恋人を作らなくてはいけないのか。
付き合ってみれば何か変わったかもしれないが,転校が日常に組み込まれていたアスランにそんな気は起きなかった。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ