Main U

□蟻地獄
1ページ/9ページ


いつも傍にいてくれる優しい幼なじみはキラにとって空気みたいな存在だった。いつも傍にいてくれる安心感で、少しくらいなら離れていても何も恐れることはなかった。彼は絶対にキラの傍から離れないと半ば本気で思っていたし、彼本人からもそんな言葉を貰うことも決して少なくなかった。

当たり前に近くにいて、無ければきっと死んでしまう程に必要な人。キラにとって彼は酸素。けれど彼にとってのキラはきっと大したことのない存在だ。空気中の比率でいうなら二酸化炭素未満。

世話の焼ける幼なじみ。いつか『もう俺がいなくてもちゃんとやっていくんだぞ』なんて言われて、きっとキラの前から消えてしまう人。
ちゃんと分かっていて、それでもキラには誰よりも必要な人だという認識は変わらなかった。

思春期の学生が閉じ込められるこの空間はある種の処女性を持ちながら、毎度中身を入れ替えていく。
学生はどの時代においても必ず存在しているが、そのどれもが全て違う存在だった筈だ。

それなのに、全体としての子どもというものは大して変わることもなく、それどころか人間というものは悲しいかな何億、何千年経っても変わらない。

自分の物にしたいとか、好きな人に好きになって欲しいとか。



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ