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□ノック
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誰かを守れるならと。ただそれだけの理由でザフトを目指した。僕は今アカデミーにいる。
食事の食べ残しが禁止だから,ピーマンが出る度に涙目になっている。だけど最大の悩みはそれではなく。
『ぁっ…あん。いっい…はぁッ』
毎晩毎晩聞こえてくるこの音だったりする。
「いい加減にしてよね…」
眠りへと誘われかけていた僕は,ムクリと起き上がり壁を睨みつける。女の子の声しか聞こえないけど,相手は隣の絶倫野郎だ。
なぜならここは男子用の宿舎で,女子は本来入れないのだから。見つかれば罰則がやってくるのは,周知の筈なのに訪れがない夜はない。
毎回同じ人間でないのは,誠に遺憾だが声で分かる。そういう節操がないのも気に食わない。大体消灯時間過ぎているのに,なんで逆にお盛んなんだよ。
そもそも2人部屋だろ。ルームメイトはどこ行ったんだ。キラは部屋割りの都合上1人だが,隣はちゃんと2人部屋だ。
厳しい訓練が毎日続いて,キラは余計なことを考えている余裕がない。それなのに毎晩毎晩の睡眠妨害。
にも係わらず成績は首位を独走する隣の人間。
「さっさと不能になっちゃえ」
そう呪いの呪文を呟いても,翌日には期待を裏切ってくれるのだ。
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