Main

□ノック
1ページ/24ページ


誰かを守れるならと。ただそれだけの理由でザフトを目指した。僕は今アカデミーにいる。

食事の食べ残しが禁止だから,ピーマンが出る度に涙目になっている。だけど最大の悩みはそれではなく。

『ぁっ…あん。いっい…はぁッ』

毎晩毎晩聞こえてくるこの音だったりする。

「いい加減にしてよね…」

眠りへと誘われかけていた僕は,ムクリと起き上がり壁を睨みつける。女の子の声しか聞こえないけど,相手は隣の絶倫野郎だ。

なぜならここは男子用の宿舎で,女子は本来入れないのだから。見つかれば罰則がやってくるのは,周知の筈なのに訪れがない夜はない。

毎回同じ人間でないのは,誠に遺憾だが声で分かる。そういう節操がないのも気に食わない。大体消灯時間過ぎているのに,なんで逆にお盛んなんだよ。

そもそも2人部屋だろ。ルームメイトはどこ行ったんだ。キラは部屋割りの都合上1人だが,隣はちゃんと2人部屋だ。

厳しい訓練が毎日続いて,キラは余計なことを考えている余裕がない。それなのに毎晩毎晩の睡眠妨害。

にも係わらず成績は首位を独走する隣の人間。

「さっさと不能になっちゃえ」

そう呪いの呪文を呟いても,翌日には期待を裏切ってくれるのだ。



次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ