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□不可抗力
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「信じられない」
カガリ・ユラ・アスハは職務の息抜きに,愛する弟の部屋に出張していた。
先だっての台詞も弟によるもので,内容は彼の幼なじみかつ,親友の女性関係によるものだ。
「これで何人目なの!アスランふられ記録更新じゃん」
キラは心底不憫だと言わんばかりに,肩を落として言った。正確には告白される回数も同数なのだが。
アスラン・ザラはキラの問いにさぁと軽く答えて,書類ばかり捲っている。
「信じられない。何でこんなに恰好良くて性格良くて高給取りなのにふられるの?」
「細かいからな。俺」
「大体お前の方がアスランより高いだろ。俸給」
「僕は全っ然もてないんだよ!」
「一部には熱狂的にもててるぞ。お前」
「大抵は私たちやキサカが排除してるけどな。屑ども」
「今なにか言った?」
双子のキラもびっくりな程に,カガリとアスランは同じ顔をしていたのだ。気になって聞き返したいけれど,ちょっと怖いような。そんな顔を。
「いや。そういえば今日,キラの観たがってた映画の封切り日だろ」
終わった分を避けたアスランがやっと顔を上げる。翡翠が穏やかな色に変わった。
「無理だぞ〜。キラは仕事さぼってたから」
「やだやだ絶対行くもん」
「あれ?俺いつ誘った?」
そう抑えて笑ういつものアスランの姿に,キラもほっとさせられた。
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