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□揺れる君をおぼゆ
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海と森が共存するオーブ。火山の恩恵,温泉は国民のオアシスだ。そんなオーブで3本の指に入る老舗旅館に一行は来ていた。
「わー綺麗な所だね」
「アスハのお忍びって奴だが,一度も来たこと無かった」
「本当に素晴らしいですわ。ねぇカガリさん。キラ」
釘を使わず建てられたという木造の旅館は趣があり,悠然と時を越えてきた事が窺えた。カガリの父ウズミのお気に入りだったというのも納得だ。
こちらが本館で,寝泊まりする部屋は離れになる。離れには小さな和式の部屋と6階立てのホテルタイプがある。
後者は団体客用に建て増しされたそうで,内装は和式。外装も森や本館の雰囲気を壊さない落ち着いた色合いでまとめてある。
庭と言うには少々広い森が建物を囲み,離れや本館までの道には飛び石が敷いてある。その脇には淑やかに花が咲き,吹く風は清浄な香りを運ぶ。
「悪かったな,ラクス。ラクスの名前で予約取って貰って」
「いいえ。カガリさんのお名前を使ったら大騒ぎですわ」
とは言え,察しの良い旅館はあのクラインだと分かっていたので,あちらにはアスハと通っている。そのため旅館側は,当然ウズミが使っていた部屋を手配しようとしたのだが。
『勿体無いよ』
とキラが言ったので"一般"に変更された。
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