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□甘く苦い感情
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「やぁこー!」
背後から名前を呼ばれたかと思えばいきなり、抱き着かれた。
「サ、サイ!?」
「探偵さんみつけたから…きちゃった!」
えへ、と無邪気に笑う少年を一瞬可愛らしく思ってしまった頭を一瞬で否定する。
「きちゃったってあんた…つい一昨日ニューヨークでまたなんか盗んだとかテレビでいってたのに…」
「うん、そこでねすっごく大きなハンバーガーみてたら弥子に会いたくなっちゃって…」
「……そう」
なんとも微妙な思い出し方に喜べばいいのか怒ればいいのか微妙な顔をするがまるで気にしてない様子のサイはにこにこしながら抱き着く手に力を込めた。
「ちょ、痛いって」
「俺ね、探偵さん気に入ってるの」
「話聞いて…って、うん?」
なんだいきなりと目を丸くするとサイはえへー、とまた笑った。
その笑顔はどこまでも子どもらしく澄んでいた。
「サ、サイ?」
「ね、俺のとこにおいでよ」
幼い声が楽しそうに誘う。
どくりと胸が高鳴った。
何かをいおうと口を開いた、と同時。
「我輩の下僕に勝手に手をださないでもらおうか」
聞き慣れた低い声に驚いて振り向けば鮮やかな真っ青のスーツを着た男、ネウロはつまらなさそうに鼻を鳴らした。
「大体そんな色気も何もないそれを持っていってもいいことはなさそうだが」
「そんなことないよ?この子普通の人間と違って面白いし、箱にしなくても楽しめそうだし。それに俺、探偵さん結構可愛いと思うよ。…ネウロだって案外、満更でもないんじゃないの?」
「…少し黙れ」
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