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□彼の願いと君の想い
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まだ幼いあの子は年よりもずっと落ち着いた少年は、新聞部という平穏な部活をしているごく普通の高校生だ。

しかしその顔の裏に隠れるはあの九条という総理の息子の地位。

確かに周囲と比べ、ずっと頭の切れるあの少年は一目置いてしまうところはあるかもしれないがそれでもずっと普通に過ごしてきた子どもなのだ。


初めてみた時、とても綺麗な子だと思った。

西洋の人形の様に整った顔、まだ子どもといえる年齢なのにまるで何かに警戒するかの如く感情をなかなか表にださない彼はあまりにも不安定で今にも消えてしまいそうだった。


「…音弥、君」


それは呟くと表現してもよいくらい小さな声だった。

だけど弓道の全国を制覇しているだけあって精神が研ぎ澄まされているのか、それとも誰もいないこの部屋でのその言葉は思ったよりも響いたのか、自分よりも小さく幼い彼は不思議そうにこちらを向いた。


「どうかしましたか?」


柔らかそうな髪がふわりと揺れる。

いつも隣にいる藤丸君は今妹の元らしく珍しく二人きりになってしまったことにらしくもなく動揺してしまう。


「あ、いや…今日は特にといった用事もないが学校はいいのか?」

「…ああ。俺はあいつとは違うから出席日数に関しては問題ありませんよ」


ただ気付けば名前を口にしていただけなんていえる筈もなく適当な言い訳を探すとそれに納得してくれた彼はふわりと笑っていった。

それだけでやはりらしくもなく胸が高鳴る。

とても落ち着いた彼の時折みせる笑顔、自分だってそんなに明るい単純な性格ではない筈なのに彼の前でだとそうもいかないらしい。




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