佐鳴
□『seductive one's man』
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作業を開始してしばらく経った頃、ふとこちらに近付いてくる気配にサスケは顔を上げた。
「捗(はかど)ってますか?」
埃っぽい蔵の換気のため、全開にしていた戸口から顔を出したのは、依頼主の男だった。
手に持った盆の上には、麦茶の入ったコップがひとつ。
「ご休憩にどうぞ」
「…ありがとうございます」
こういった任務の際、休憩にと好意で物を頂くことは少ない。
少なからず不信感をもったものの、今は任務を受けている立場上、依頼主の命は絶対だ。
仕方なくサスケはコップを口に運ぶと、一気に飲み干した。
空になったコップを地面に置いた瞬間。
男の口端が僅かに上がったのを、サスケは見逃さなかった。
「………っ??!」
どさり。
両手を地面に押し付けられる形で押し倒された。
男が動いたのに気づかなかった訳ではない。
瞬時に体が動かなかったのだ。
(…失態だ)
「……体が痺れて、動かないだろう」
男がサスケの上に跨って、楽しそうに言う。
「痺れ薬を入れたからな」
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