大乱闘小説
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異常発生、異常発生
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「ロボさぁーん!」
私に駆け寄る、小さな黒い影。
彼の場合は身体そのものも黒いのだが。
その薄い脚を器用に動かして、電子音を奏でながら走ってくる友人に、こちらからも近寄って問う。
「どうしましたか?ウォッチサン」
疲れを知らない彼は即座に叫んだ。
「メリークリスマス!!」
同時に、半ば押し付けるように手渡された物は、硬質な何かを包んでいる白いタオル。
その意図が分からずに戸惑う私に対し、彼の説明が始まった。
「…ロボさん、まだ今日が何の日か覚えられてないのー?毎年みんなでお祝いしてるのにぃ」
ああ、そういえば、関節に染みる寒さを伴って年が幕を降ろす時期になると、ここのメンバー全員で何やら祝宴を開いていたような。
確か、その名は…
「クリスマスだよロボさんー」
あと一歩のところで先取りされたが思い出した。
そうだ、クリスマス。
何を祝っているのか私は知らないが、子供達がプレゼントを貰う日だ。
何故子供だけ貰えるのか、また誰がそんな気配りをしているのか…よく分からないままだが。
「…はい、今思い出しました。ですが…これは?」
渡された物を掲げながらそう言った途端、驚きを率直に表した彼の表情。
聞かない方が良かったのではないか、という後悔が押し上げてくる。
私はいつもこうだ、疑問に思えばすぐ音声に出してしまって。
生憎、俗に言う『空気を読む』機能は、私には付いていないのだ。
僅かな沈黙の後、一言。
「ロボさんてさぁ、頭いいのに頭悪いよね」
果たしてそれは良いのか悪いのか、はっきりしてほしい所である。
「あのね、今日は大切なひとにプレゼントあげる日なんだって。サンタさんはこの世界のみんなが大切だと思ってるから、みんなにプレゼント配るの。でも大人は、欲しい物は働いてお金貯めて自分で買えるから、だからね、子供にだけ、クリスマスにサンタさんが来てくれるの」
マルスさんが言ってた。
そう付け足した彼は、長い説明を終えた達成感からだろうか、満足気に笑った。
とはいっても彼の顔には口以外無いのだが、私から見てもそれとなく分かるのだからそういうことで良いのだろう。
それにしてもその、さんたという人物の心の広さは素晴らしいと思う。
たった一晩で世界中を回る技術も、一度拝見したいものだ。
「そうなの、ですか。それで…これは…」
再び訪れた、沈黙。
また私は、余計なことを…
「ロボさん、ニブい!ニブすぎるよ!」
突然嘆くように言われ、少し身が竦んだ。
「…鈍い…というのは、何に対する話でしょうか?一応、衝撃には強い構造になっていますが」
「ちーがーうー!!」
駄々を捏るように手足をばたつかせて何かを訴える彼には申し訳無いが、私にはその言葉のニュアンスが理解出来ないのである。
「もう知らない!ロボさんのバカー!」
そう叫んで、彼は走り去ってしまった。
残ったのは呆気にとられ立ち尽くす私と、受け渡されたタオルとその中身、そして寂寥のみ。
「………」
ふと、手元の物が何なのか気になり、タオルをそれから剥がす。
中から出てきたのは、
一本の、ネジ。
いや、違う。違わないが、違う。
ネジと呼ぶにはあまりに大きく、色は赤と銀、形はお世辞にも整っているとは言えない。しかも材質は紙粘土。
何に使うのか、長い紐が付いている。
だが、形状を見る限りではネジ以外の呼び名が浮かばない、なんとも不思議な物体で。
何なのだ、これは。
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