大乱闘小説

□幼い独占欲
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僕がもっと早くココに来ていれば
あのひとの隣は

僕のものだったのかもしれない。

僕がもっと早くあのひとに惹かれていれば

あのひとの隣は、きっと。




「おやびーんッ!!」

黄色い身体の小さな、その身体に見合わない強力な電気を使って戦うその子は

今日も庭を散歩してたあのひとの元へ駆けていき、その頭に乗る。

「てめぇ、その呼び方やめろって言ってんだろ!てか乗るんじゃねえ!!」

「へへっ、だって僕、ココ好きなんだもん!」

そんな光景を屋敷の中から見て、また僕は溜め息をついた。


「どうした?貴様のような子供が溜め息などついて」

いつの間にか隣にいた、背の高い男の人。

「あ、池さん」

「アイクだ」

その豪快な戦い方に憧れて、どうにもパワーが無い僕が弟子入りさせてもらった人だ。僕の、師匠…っていうのかな。

「…また貴様は…アイツを見ているのか」

そう言って、彼は視線を僕から窓の外に移した。
視線の先では、たった今、あのひとが頭からあの子…ピカチュウくんを振り落とした。
振り落としたと言っても、あの子が地面に落ちないようにしっかり受け止めてあげてたけど。
そんな些細な優しさが、僕は大好きで。

だけど、それが僕じゃないひとに向けられるのを見るのは、
…なんだか、辛いんだ。
すごく自分勝手だけど。


「…池さん」

「なんだ」

もう飽きたのか、諦めたのか、訂正を入れずに彼は僕の話に耳を傾けてくれた。

「僕みたいな人間の子供があのひとを好きになったのって、変なのかな?」

コレは、前からの悩み。

僕は人間の子供で、あのひとは大人の獣だ。しかも、僕と同じ男。
あのひととの共通点を探すのにも苦労しそうな僕が、あのひとを好きでいていいのかな…と。

「俺は…貴様がアイツにどんな感情を抱こうと変ではないと思う」

予想に反した優しい答えに、顔を上げる。

「種族だとか性別だとか、そんなの愛情の前では無に帰す…と、蛇が言っていたぞ」

蛇…スネークおじさんか。
前半だけ聞くと、この人、キャラ崩壊を起こしたことになるな…
そんなどうでもいい事を、一瞬考えた。

「…そっか…うん!じゃあ頑張ってみるよ!」

あのひとの中で、僕の存在が少しでも大きくなるように。
ピカチュウくんはライバルだと、言えるくらいに。

「あぁ、頑張れ。ちょうどあの鼠がいなくなったぞ。
話し掛けるチャンスなんじゃないか?」

「…うん!行ってくるね!ありがと、池さん!」

庭に出てすぐ、僕は全力で駆け出した。

強くて、厳しいけど優しくて、頼りになる、大好きなひとに向かって。

「おやぶーんッ!!」


あの子の真似をして思いっきり飛び付いて転ばせちゃったことについては、もっと反省するべきかもしれないけど…

僕は、これじゃ表現しきれないくらい、あなたが好きなんだよ?

今はあなたが分かってくれなくてもいいんだ

でも、いつかは…気付いてほしいな。
ねぇ、…親分。



End...
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