星狐小説

□I want…
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今年のクリスマスにはお前が欲しい
…だなんて、何の恥も無く言えればいいのに

この中途半端な関係を断ち切れればいいのに

出来るなら、今すぐにでも…




冬に入って半月、一部を除いた各惑星に本格的な冷気が訪れる時期。
グレートフォックスのリビングにて、俺達は二人きりでくつろいでいた。

「なぁ、お前ちゃんと食ってるか?」

「あ?毎日一緒に食ってんだろーが」

「固いよ、なんかもう…骨しか無い感じ。
これじゃ使えないな」

「てか、お前オレの脚を何だと思ってやがる」

「俺専用枕」

「お前なぁ…」

こんな会話だけでも、俺の顔はニヤけてしまう。
男相手になんて様だ、と自分を嘲笑するのも慣れた。

けど、今のこの状況。
ニヤけるな、という方が無理な話だ。
何せ、いつもはこんなことしようものなら突き飛ばされるであろう、コイツの…
脚を、枕にしているのだ。

つまりは、膝枕。

何故か、今日はその脚を快く…ではなさそうだが、貸してくれているのだ。
きっと、機嫌がいいのだろう。


骨張っていて固いけど、心地良い温かさを俺の頭に伝える枕に、話し掛けた。

「そういえばさぁ、もうすぐクリスマスだよな」

「あー…もうそんな時期か…どーりで寒いわけだ」

そうだ、コイツは、極度の寒がりだった。
昔から知っていた事実を再確認する。

「じゃあ、防寒具でもプレゼントしてやろうか?」

「いらねーよ」

「なんでだよ?」

「そこらへんに売ってるのなんかより、
…お前の方が温かそうだ」

見上げると、赤に染まった頬。
俺と合わせないように、逸らされた視線。

顔の筋肉が更に緩むのを感じながら起き上がり、頑なにこちらを見ようとしない空色の瞳を見つめる。

「じゃ、今年は俺をプレゼント、ってことで」

「…勝手にしろ…」

俺の冗談に答える仏頂面。
その横顔が、愛しくて…

その頬に、キスを一つ、落としてやった。


案の定、さらに顔を赤く染めて怒鳴ってきたけど、構わずに自室へ逃げた。
聞く耳持たず、というやつだ。

仕方ないじゃないか。
俺だって、赤くなっているであろう顔を、晒したくはないのだから。




END...
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