クロスロード

□交わる行路
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おかしな夢を見たのはいつのことだろう。
砂漠の真ん中で1人の女の子が泣いている。

俺と同い年か1つ上くらいの。
吹き荒れる砂嵐の中、彼女は叫んでいる。なんて言ってるのか聞こえないよ。
どうして泣いてるの?


―――あああッ!


悲痛な叫びが胸に突き刺さる。

初めて会った彼女を知らないはずなのに、彼女が泣いてるのを見ていると俺も泣きたくなる。

泣かないでくれよ、そう呟くと場面は変わって俺はどこかに閉じこめられ寒さからなのか目を閉じた。



目を覚ますと背中に嫌な汗が流れて、ふと頬に触れると冷たいものに触れた。
なんだよ、これ。

不可解な出来事はそれきり。



学校生活にも支障なかったし、野球の練習にも響かなかった。


「巣山ー、1時間目なにー?」
「数学。てか栄口眠いのか?」


なんかね、と机にうなだれる。
あの変な夢を見てから1週間が経とうとしていた。
誰かに話そうとも思ったが馬鹿にされるのがオチと話さなかった。


「そいや知ってるか?」
「何を?」
「来月転校生来るらしいぜ」
「来月?」


なんか微妙な時期。と答えれば確かにな。と巣山も同意。
転校生か……いや、それより今日眠い。


うとうとと机に伏せるとあっという間夢の中。
そう、いつものように夢の中落ちれたらよかった。


堕ちた先は、運命を変える夢になるとこのときは思わなかった。




―――――




ぺちぺち


「ちょっと、君……」
「………ん」


頬を叩かれた感触で目が開いた。
いつのまに寝てたんだろ。もう授業始まって……


「やっと起きた。こんなとこで何して……」
「…は?」


俺を起こしたらしい人は、先生でも巣山でもクラスの奴でもない。
起き上がったときじゃりと砂が爪に入った。
教室じゃない。室内じゃない。まして校庭でも、どこでもない。

目に映る殺風景な景色はどこまでも黄色くて、まるで写真を見てるみたいだった。


「ここ、どこだよ……」
「君大丈夫?」


肩を掴まれそちらを見るとマントを頭から被っている人。声からして女の子。


「え、と……あなたは?」
「通りすがり。君が倒れてるの見えたから声かけたの」


自分の格好を見ると制服。学校にいたんだから当たり前だけど。


「………君、ここどこだかわからないの?」
「……全然」


素直に答える方が賢いだろうと頷くと彼女はちょっと待ってと服の中から地図のような物を取り出した。
俺はというと、周りが砂漠とわかり暑さで汗が流れてきた。


「あ、その格好じゃ熱で体力なくなるよね」


まず場所変えようか、と彼女はまた何かを出して口に加えた。ピーッと頭に響く笛の音が辺りに響いて耳を押さえた。


「これが聞こえるなんて、彼らみたいだ」
「え?今なんて……」
「来たよ、迎え」


耳が痛くて彼女が言ってることは聞こえなかったが、上を見上げた行動はわかった。
それに習って上を見上げると大きな影が降りてきた。

……は?


ぶわっと風が起きばたばた彼女のマントがなびく。どすんと砂漠の上に降り立ったそれに彼女は近づいた。


「私の相棒のフィリアーノ。フィノって呼んでね」


があ、と口を開けるフィリアーノ。ただ、肌が固く赤い色をしてるのは見間違いじゃないだろう。


「さあ、乗って」
「え?これに乗るんですか?」
「当たり前じゃん。街に歩いて行くなんて自殺行為だよ」


とんっと軽くジャンプしてフィノの背中に飛び乗った。彼女は俺に手を差し出した。


「ここで死にたいなら止めないけど、生きたいなら私の手を取って」


死ぬか生きるか。
そんな選択肢があったら、選ぶ方は決まってる。

ぐっと足に力を入れ、彼女の細い手に手を伸ばした。


「聞き忘れてたけど、名前は?」
「栄口勇人。あなたは?」
「…………サオよ。はじめまして、栄口」



俺を見るその目が少し歪んだように見えた。





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