隠の王
□指先
1ページ/1ページ
「俄雨が目を覚まさないのも、全部私のせいだ。」
私は項垂れる雷光をグーで殴ってやった。
「それが同情ほしさに言ってるんなら私はお前を殺す。」
雷光は呆気にとられてたが、その顔を見るだけで苛つく。
ただでさえ雷光が俄雨を斬ったという事実だけで腹がたつのに。
お前はお前に斬られた俄雨がどんなに痛かったら考えたことあるのか。
俄雨がずっと目を覚まさない私の気持ちを考えたことあるのか。
雷光はその後すぐに病室を出ていった。
「がう…」
俄雨はきっと、私が雷光を殴ったと知ったら怒るだろう。
でも怒っていい。怒られてもいい。きっと今ならそれさえ心地好く感じるはずだから。
だから目を覚ましてほしいんだよ、俄雨。
そっと、白い顔を見つめながら
まだ動かない指先を握った。
ゆびさき
(指先はまだ、動かないまま)
20081229