夢
□不器用な彼
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「ねぇ・・・もう別れよっかぁ・・・」
付き合ってまだ2ヶ月。
まだ2ヶ月なのに、私は耐えられなかった。
一緒にいてもずっと背を向けパソコンに没頭で、話しするにもよくわからないパソコンの話を聞かされるばかり。
こんなんだからデートなんてもん、したことない。
愛されてるって思いたくても思えない。
パソコンの方を愛してるにしか思わない。
だから、
まだ私だって好きだけど、もう耐えられなかった。仕事の邪魔もしたくないしね。
「うん・・・わかった・・・」
しばらく間があって、無表情な声と一瞬止まったキーボードの音が返ってきた。
あぁ、もうこれで終わりかぁ・・・
理想と現実は違うな・・・
付き合う前の方が全然よかったかも・・・
「じゃぁね、もう行く・・・」
「うん」
「ありがとね、今まで。バイバイ」
「うん」
結局最後まで、短い返事しか返ってこなくて、振り向くこともなかった。
ため息をひっそりとつきながら立ち上がり、玄関に向かう。
もうここを出たら、ホントに終わりだ。
ふと、ピーピーとエラーを知らせる音が聞こえた。
何かと思って振り向いてみると、どうやら結也のパソコンから鳴っているようなのだが、止めようとしない結也。
気になって、
「忘れ物・・・」
なんてなかったけど、嘘ついて戻った。
俯いたままで表情すら見えない。
でも、肩が震えてる。
「結也・・・?」
「・・・・・・」
ずっと鳴り続けるパソコン。
まさか・・・
震える肩を落ち着かせるように後ろから抱きしめた。
すると、びくりと反応する身体。
「・・・・・・くない・・・」
肩と同じように震えている声。時折、小さなしゃっくりが聞こえる。
「ん・・・?」
「別れたくない・・・別れたくないよ・・・」
揺れる決意。
「俺・・・なんでもするから・・・ちゃんとするから・・・」
不意にパソコンの画面を見ると、最小化されたウィンドウのタイトルにデートの文字が見えるものや恋人の文字が見えるものもある。
「うん・・・」
「行かないで・・・」
なんかわかった気がする。
「好きだから・・・行かないでって・・・お願いだから・・・別れたくない・・・」
まだちゃんとはわからないけど、わざとあんなことしたり、私に興味もってないとかじゃなくて・・・
ただ・・・
「不器用なだけなんだ・・・」
「・・・?」
わからなかっただけなのかな、きっと。
「ごめん、やっぱ好き・・・。泣かないで・・・」
やっぱ、じゃないんだけど、こんな結也見たらもう手放す気にはなれない。
「私も別れたくないよ」
あとで、
どういうサイトが聞き出そう。
そう、あとで。