黒バス&その他&おお振り 

□青夏の1ページ
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和さん独白多め



最初はただいい子だなと思っていた。
一つ下の後輩だったからそういう感情はなかったけど、彼女はよくマネージャーの仕事を手際よくこなし、嫌な顔しないで影からも野球部を支えてくれた。
そして、笑顔が絶えない。きつい練習があっても、終わってから見ると疲れがいくらか和らいだ。

そういうところが好きだった。
けれど、始めは人間として彼女のことが好きだっただけだ。

それが違う好きに変わっていったのはいつからだろう。

いつの間にか目は彼女を追っていて、

いつの間にか気づくと彼女のことばかり考えていた。

そんなこと初めてだったから、悩んだすえ慎吾に相談してみたら、




「お前にもやっと春がきたか」




そう言われて肩に手を回された。

冷やかし混じりに相談にのられて、恥ずかしくなってやっぱり話すんじゃなかったと思ったが、意外にもまじめに相談にのってくれたので、やはりしてよかったと思った。


相談して、変わったことは何もなかった。

慎吾には積極的に行けとか言われたが無理だった。

向こうは先輩としてしか見てないわけだし、

もし俺なんかが告白したとして断られるのは明白だ。

彼女は同学年だということもあってか…と思いたいだけなのだが、よく準太と話している。

なんとなくそのときの彼女の顔が俺を含む他の野球部の連中と違う笑顔だったから、きっと彼女は準太のことが好きなんだなと思った。


その時点で俺に勝ち目はない。
俺は準太みたいにかっこよくはない。
嫉妬するわけではなかったが、羨ましかった。

俺の恋は必然的に叶わないのだ。

そうだとわかっていても、そう簡単に他の女子に目移りできるほど器用でもなかった。

目はあいかわらず彼女を追いかけて、
話すときには馬鹿にみたいに一人舞い上がって…
気づいたときにはむなしさと苦しさがいつも残るだけだ。


そのまま忘れることもできずに三年になって、夏の大会に向けて練習もよりハードになってきたころになっていた。
あいかわらず、何も変わってない。


変わったといえば準太と彼女のしゃべっている場面を見るのが増えた。


とうとう付き合ったのか…


やっぱり彼女の隣は準太が一番似合ってる。

何度同じことを頭の中で繰り返し、落ち込んだんだろう。
今日も同じように一日が終わると思っていた。

だが、今日は少し違った。


またいつの間にか準太としゃべっている彼女に目を向けていたら、ばちっと目が合ってしまった。

すぐに反らしたが逆に怪しくなってしまったと思う。

あぁ、やっちゃったな…

また目を向けるのもどうかと思ったが、やはり気になり、こっそりと横目でちらっと見る。

すると、準太と少し会話した彼女が小走りでなんとこっちに向かってきた。

思わず、止めようとしていた蛇口を逆にひねってしまって水がかかった。




「あっ、和さん!大丈夫ですか!?」




なんてタイミングが悪いんだ、思いっきりかっこ悪いところを見られた上に心配されてしまった。
慌てて大丈夫だと言って、今度は水を止めた。




「あの和さん、今ちょっといいですか?」




気のせいか彼女はいつになく真剣な目をして聞いてきた。

たぶん気のせいだと思うから、きっと部活のことでなにか連絡することがあるのだろう。




「いいよ、まだ休憩あるしな。なんか連絡か?」



「いや、そうじゃないんです…あの、個人的に伝えたいことがあって…」




個人的に伝えたいこと…?

まったく想像がつかない。




「あの………えっと…も、もうすぐ夏大ですねっ!最後になってしまうのはさびしいですけどがんばってくださいね!!」



「あぁ、ありがとう。そうだな、でも、できるだけみんなと野球を長くしたから、優勝を目指してがんばるよ」



「はい、私応援してます!」




彼女の激励はとても嬉しかった。
けど、なんで今、俺だけに言うんだ…?

しかも、それ以降会話が続かなくなってしまって、気まずい沈黙が流れた。

これは…何か話したほうがいいよな…でも、話す内容が…

大いに悩んでいたら、先に彼女が沈黙を破った。



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