黒バス&その他&おお振り 

□それぞれの結婚記念日
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栄口side(アンケより)


「ご…ごめん、勇人…ちょっと遅くなる……かも」

『……あっ、そう。全然いいよ、別にしょうがないって。じゃぁ、仕事頑張って』

「あっ、ま…っ」



ブツッ


ツーツーと携帯電話の向こうで通話が切れた音が虚しく響く。
うわー…絶対怒ってる……
いくらいつもの声に聞こえても、伊達に勇人と結婚したわけじゃないからあんなのわかる、怒ってるって。
だって、あの妙な間!!あんな恐ろしい間、付き合ってたころ私が他の男子とメールしててバレて問い詰められたとき以来だ。あぁ、あの時は本当に殺されるかと思った。
きっと、あの時みたいな怖い笑顔だったに違いない…!!!

でも…そりゃぁ…そうだよね、結婚して初めての結婚記念日に帰りが遅くなるなんて…
二人とも定時で終わらせて、ちょっと高級なレストランにでも行こうって約束したのに…
よりによって私が残業くらって、遅くなるとかないよな…

って、とりあえずさっさと残業終わらせて帰らないと!!それこそ、勇人に殺される!!

レストラン……行きたかったなぁ…
勇人に謝らないと…



「………」



ようやく終わって帰宅できた。けど、私は玄関の扉の前で立ち尽くしていた。
私の必死さが上司に伝わったのか意外に早く切り上げさせてもらって、メールを勇人に入れたんだけど……返信がこない…!!
絶対怒ってる!!たぶん怒ってるの通り越してる!!
だから、勇人に会うのが怖くて扉の前で立ち尽くしてるというわけだ。どうしよー…ちょっと…怒鳴られるのだったらまだいいけど、あの人笑顔だもんな、怖い笑顔なんだもん。

はぁ…



「おかえり。どうしたの、そんなとこで突っ立って」

「はぇっ!?」



溜息をついてたら、ガチャッと扉の開く音がする。
えっ、と思ってたら、今の今まで会うのを躊躇っていた本人が目の前に立っていた。
笑ってる…っ!!



「ご、ごめん、勇人!!結婚記念日なのに、帰りが遅くなっちゃって…本当にごめんなさい!!」

「………」



慌てて頭を下げたんだけど、勇人はしばらくしゃべらない。あぁっ、この沈黙がものすごく怖い。怖すぎて頭を上げられない。



「…だから、遅くなっちゃったのはしょうがないって言っただろ。まだ気にしてたの?」



まだ気にしてたって…
思わず頭をあげたら、そこにはやんわりとした表情の勇人がいた。



「だって…あんな…あの間は……怒ってないわけないじゃん…」

「ん?なんか言った?」

「いえっ、なにも?」

「そんなことよりさ、中に入って晩飯食べよう」

「え…?」



晩御飯?
晩御飯はいつも私が作っていて、用意なんてしてないのに…今からレストランにでも行くのかな…もう予約はキャンセルしてあるはずなんだけど…

頭にはてなばっか浮かべながら背中を勇人に押され部屋の中に入る。



「うわ…」

「さぁ、食べようよ。味見は一応したから大丈夫だと思うけど」



ウェイターみたいにわざわざ椅子を引いてくれる勇人。私は呆けたようにテーブルの上に釘付けになりながら引いてくれた椅子に座る。
テーブルの上には絶妙な焼き加減のステーキや新鮮な色をしたシーザーサラダ…他にもレストランで出てきそうな料理がテーブルを埋め尽くしていた。



「こ…これ…って……」

「俺が作ったんだ」



勇人は照れもせず、私の反応を楽しそうに見ながら当然のようにそう言って私とは向かいの席に座る。
ていうか、勇人って料理できたの…!?下手すれば…いや、下手しなくても私より確実に上手に見える!!



「勇人…なんで…これ、料理できた…んだ?」

「さーぁ」



勇人に聞いてもニコニコしながらはぐらかされるだけで、教えてくれない。



「そんなことどうでもいいだろ?あっ、食べる前に手、出して。こうやって」

「え?あ…こう?」



結局教えてくれないまま、不意にそう言われた。
勇人がやったように両手で掬うような形を作って差し出した。
いったいなんだろう。
そう思っていると、勇人は用意されていた赤ワインをそのまま私の手の平に傾けた。



「なっ!ちょ…ッ」



一瞬、ワインが私の手の平に溢れるかと思った。
でも、まだ封の切ってないから当然ワインは出てこない。しかし、その代わりに手の平に何かがシャラ…っと乗った。



「え…」



驚いて手の中を覗いてみると、そこにはデザイン的なハートがモチーフの金のネックレスがあった。



「ゆ、勇人?なにこれ…」

「結婚記念日のプレゼント、気に入ってくれると嬉しいな」



微笑む勇人は赤ワインの封を切っていた。
気に入るもなにも…



「あ…ありがとう!これ一生大切にする!」

「大切にしなくてもいいけど、できるだけつけてよ」

「うんっ、毎日つける!本当にありがとう、晩御飯だけじゃなくて、こんな…ものまで…本当に嬉しいっ」

「俺も、お前が喜んでくれて嬉しいよ。さっ、冷めないうちに食べて」

「うん」



もらったばかりのネックレスを首にかけ、ドキドキしながら口に運んだステーキは外見を裏切らない美味しさでちょっと悔しい思いをしながらも感動した。

結婚記念日がこんなに幸せしかないものだとは考えてなかった。
勇人の作った料理を口に運ぶ度に味と一緒に幸せを噛み締める。

そうだ、次は私が勇人より美味しい料理を作ってやろう。そして、お返しになにか勇人の気に入りそうなものをプレゼントしよう。

変わらない誓った愛を忘れないように…今日という日もこれから先ずっと忘れないでおこう



END



にしても、両方とも甘すぎるww
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