黒バス&その他&おお振り 

□好きな人の前ではきれいにしたい
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「なんで爪をやすりで擦ってんの?」


爪の手入れをしていたら、不意に声をかけられた。
顔を上げて見れば、正面に興味津々な目で私の爪を眺める女の子がいた。


「レディのたしなみよ、たしなみ」


「たしなみ?」


「あなた、腐っても女の子でしょ?そんなことも知らないの?」


「知ってるよ、それくらい!違う、なんで爪をやすりで擦るのがたしなみかって聞いてんの」


「………それをわかってないっていうのよ、もう…あと、なんかその言い方やめて、爪のお手入れって言って」


なんでこの子、性別がメスなのかしら。
神様はひどいわぁ…私もある意味そうだけど、あぁ、でも、神様でも無理ね。


「変わんないよ」


「変わるわよ」


「爪じゃん、だれも見ないよ」


この子、喧嘩を売りにきたの?


「意外に見てるのよ。それにこういうとこもちゃんとしておかないと振り向いてくんないわよ?」


「だれが?」


「だれって……好きな人に決まってるじゃない!」


「えー…なにそれ」


「………あなたに言っても無駄だったわね」


女の子なのに自分を磨こうともしない子に好きな人なんているわけないわね
やだ、失礼なこと聞いちゃったわ


「なんだよ、それ!!あんまり子供扱いしないでよ」


「してないわよ、女の子扱いしてないだけ」


「………それ、もっとひどいじゃん」


「そう?」


ぷくーっと頬を膨らますもんだから、顔がまんじゅうみたいになってる。
思わず吹きそうになったけど、堪えた。


「もー」


そんなに子供扱いしてほしいの?

拗ねるのはいいけどテーブルを揺らすのはやめて


「……グレルは好きな人でもいんの?」


「はぁ?何言ってるのよ、いるに決まってるじゃない」


「だれ?」


知らない子がいるなんて…世も末だわ


「セバスちゃんに決まってるでしょ?」


「せばすちゃん?あぁ、あのシエルんとこの悪魔……あんなやつのどこがいいの?」


半ば独り言のように聞いてきた。

やっぱりこの子、喧嘩売りにきたのね


「あなた…わかってないわね。どこがいいってどこもいいに決まってるじゃない!あの色気、顔、目…あぁ、考えただけでもゾクゾクする!!」


「きも…っ」


カチンときたわ、今。
真顔で言っちゃってくれて、この子ったら…危うくブチギレそうになったわよ。
まぁ?私は大人で淑女ですから?ここは耐えますけど?
次はないわ。


「…無理だよ、特にあの執事はもっと無理。てか、アンタ男だし」


「心は女だからいいの、こうやって自分を磨いていればいつか振り向いてくれるものよ」


「…………」


まぁ、この子に言ったって無駄でしょうけど。
よし…爪の手入れ終了。いつにもなく完璧の出来栄えじゃない、あとはマニキュアねー…って


「なに?」


いきなり差し出された手。

怪訝に思って彼女を見てみると、ぶすっとした顔で自分の手を見つめて


「やって」


「はぁ?」


「爪の…お…お手入れ…私できないから…」


なによ、急に。

彼女をしばらく見ても、顔を上げずにずっと手を見ている。

…ったく、しょーがないわね。まぁ、腐っても女の子なんだから、このくらいが目覚めても不思議じゃない。
彼女の手をとって爪やすりでやたら凹凸の目立つ爪先を整えてやる。


「急にどうしたの?」


「………私にだって好きな人くらいいる」


「へぇ、意外ね」


本当に意外だわ。


「だれ?相談にのってあげなくもないわよ」


「……………」


不意に身を乗り出した彼女は何かと思って顔を上げた。
そしたら、
目の前が彼女でいっぱいになっていた。


「…っ、…え」


ぺろりと意外とみずみずしい唇を舐める彼女は座りなおして


「グレルが好き」




あまりの事にしばらく頭が真っ白になった。



そのあと、この私でもイスから落ちそうになるくらい動揺することってあるんだわ…とその数分後に心拍数の高い鼓動を感じながらしみじみと思った。



END

なんだこりゃww
なんかいきなりグレルをやってみたくなった。

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