テニプリ&イナゴ&男主置場 仮表

□嘘つき天気予報
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《午前、午後と共に空には雲一つない、快晴が……》


なんて自信満々で言っていた天気予報のお姉さん。


「嘘つき」


もう絶対、あのお姉さんは信用しないことにしよう。

昇降口の屋根の下から見る外は、少し先が見えないくらいの土砂降りの雨が降る。

帰るの嫌だなぁ…
しかも、傘なんて持ってないよ…

ため息をつきながら、鞄の中を掻き回す。


「あ、あった」


そういえば、この前、雨だって天気予報のお姉さんが言っていたのに、晴れたときに持っていった折りたたみ傘が入っていた。
ていうか、お姉さん、全然天気予報当たらないね。

よかった、こんな土砂降りだからきっとあんまり意味をなさないだろうけど、これでちょっとはマシに帰れるだろう。

鞄から折りたたみ傘を取り出そうとしていたら、ふと横にきたカップルが


『あー…傘持ってへんのに…』

『俺、傘持っとる。入れてやるからはよ帰ろう』

『あっ、ホンマに?ありがと!』



「……」


大きな黒い傘に二人入って仲良く土砂降りの雨の中を進むカップルを見送り、鞄の中の折りたたみ傘を見る。
自然とため息をつく。

………いいなぁ


まぁ…いいや、帰ろう

うらやましいけど、あいにくあれをできる相手はいない。
鞄の中から折りたたみ傘を取り出す。


「はぁ…」

「うわっ、むっちゃ雨降っとるやん…」

「ひっ」


傘を開こうとしたその時、真横、本当に真横からけだるそうな声がした。
いきなりだったから、驚いて変な声が出た。


「そんな驚かんくてもええやろ」

「えっ?あっ、ごめん…っ」


呆れた声に謝りながら横を見てみればまさかの財前君が。

今日も耳にピアスしてる。
中学生でピアスを5個もつけていて、少し冷たい目と口調。私は正直、財前君が苦手だった。

緊張しすぎて何を話していいかわからず固まる。
ていうか、これ、話したほうがいいのか?
財前君の独り言に私が勝手にびっくりしてしまって、それに財前君がたまたま気付いて突っ込んだだけで、もう会話は終わってるかもしれない。
だから、このまま帰ってもいいかもしれないけど、動けない。


心臓が破裂しそうなくらいバクバクいってる。


「……雨、めっちゃ降っとるな」


内心パニックに陥っていたとき、不意に財前君がちらりと私を流し目で見て、さっき言った言葉を今度は私に投げかけた。
バクバクいっていた心臓が部分破裂する。


「えっ!?あっ、そ…そうだねっ」


緊張しすぎて声が裏返ってしまった。
うわ…絶対変なやつだと思われた…


「これは傘差さないとあかんやろうな…」


焦る私に対し、財前君は特に気にせず言葉を繋げる。
よかったとは思うけど、ちょっと複雑だ。やっぱり苦手だ。

たまに財前君に声を掛けられるけど(授業のプリントについてとか)、うまく答えられた試しがない。


「そ、だね…ッ」


面白い返事も出来ないまま、同じ返事を繰り返してしまった。
失礼なことをしてしまった、なんか私も続けないと…


「ッ…っか、傘ないと…風邪ひいちゃうね」


い、いまいち言葉になってない…ッ

私が言ったあと、一瞬雨の音が大きくなった気がした。


「ご、ごめ…」

「せやなー…一歩でもこっから出たらびしょ濡れもええとこや」

「あ…うん」


答えてくれた…

それよりも、こんなに会話したの初めてだ。
やっぱりまだ苦手だし、ちょっと怖いけど、思ったより全然普通だ。


「今日晴れる言うたのにな…ホンマにあの天気予報、最悪や」


あ…同じ天気予報見てたのかな…


「晴れ言うたから傘持ってきてへんし」

「あ…」


外の雨をずっと見ていた財前君が不意にこちらを顔を向ける。

また心臓が部分破裂した。


「…自分、傘持っとるやろ?」

「へっ?あっ、うん…」


そう言われて私は開こうとしていた傘を見た。
しかし、いきなり手にしていた傘を財前君がひったくる。


「えっ、まっ、ちょ…っ」


いきなりで、そんなことされるとは思わなかったから混乱する。

混乱している私を他所に財前君はさっさと私の折りたたみ傘をガシャッと開いた。

私の傘は淡いピンク色で、とてもじゃないけど財前君とは相性が悪い。そんなことを混乱しているのに、ぼやっと思っていたら、財前君は開いた傘を差し、昇降口の屋根と雨の降る外の境目に立つ。それから、


「しゃーないから入ってやるわ。ほら、帰んで」


そう言いながら、どこか悪戯っぽく見えた笑みを浮かべた。



トンッ



傘に落ちた大粒の雨粒の音が
その音だけが
やけにクリアに聞こえて

私の心臓がトクンと苦しいけど、決して嫌ではない鼓動が

鳴った。



半分より少し広く空けられたその空間は、入ると息が詰まりそうで、顔が沸騰しそうなくらい熱くなった。



END


はい、久々に書きました。
リハビリ作です、とか、なんだかかっこいいこと(?)言ってしまいましたが…

わかる人にはわかるかもしれません。

これ、初音のメルトから連想して書きました。ちなみに2番のサビにギリギリ入ったらへんです。
まぁ、私なりの解釈ですので、こんな解釈してんだなと思って見てやってください。

やっぱり曲を元にして書くのは難しいですorz

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