□思い違い
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思えば、普段は勉強など二の次で自主練や委員会活動に精を出す筈の小平太が私に勉強を教えてほしいと部屋までやってきたのがそもそもの始まりだった。

ちょうどその時文次郎は委員会で出払っていて、小平太と二人きりという事に少々後ろめたさを感じながらも二つ返事で引き受けた。

とは言っても、文次郎と私は所謂恋人同士というものでもなく、単なる私の片恋だったのだが。

多少話が脱線しながらも、真剣に勉強する小平太に珍しい事もあるものだと言えば、
「へへっ、好きな子が努力家っていうのもあってか頭良いからさ。
少しでも釣り合うようになりたくて」

と照れた笑いを見せるものだから、何故かこちらまで暖かい気持ちになって微笑んだ。

そんな時、
「あ、仙蔵顔に睫毛付いてるよ。とったげる!!」
と小平太が言うもんだから、その言葉に甘えて取ってもらおうとしたその時…


「何だ、お前らそういう関係だったのか。」

文次郎の声に、はっと部屋の障子を見てみると、そこにはニヤリと嫌な笑みをしながら壁にもたれかかっている文次郎が居た。

どうやら、小平太が睫毛を取ろうとしてくれていたのを接吻をしようとしていたと勘違いしたらしい。

「なっ、違うに決まっているだろう!!」

「照れんな照れんな。
心配しなくとも誰にも喋りゃあしねえよ」
そう言うと、文次郎はさっさと部屋を出ていってしまった。

―――何でこんな事になったのかなんて、自分でも分からない。

誤解されたまま、私とあいつはただの友人になってしまうのだろうか、まだ私は想いを伝えていないのに―――。


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