□嫉妬
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苛々する。
自分以外の誰かと話すあいつを見ていると、己の嫉妬深さに嫌気がさしてくるから―――。



とある日の放課後、今から鍛練に行くのか、部屋を出ていこうとする文次郎を呼び止めた。

「おい、文次郎」

「ん?何だ」
そういって奴は身体ごとこちらを振り返り、私をじっと眺めてくる。
その一挙一動に私の心が揺さ振られる事実を、こいつは知らない。


「お前を見ていると腹が立つ。だから部屋から出ていってくれないか」

唐突にそう言うと、文次郎は怪訝な顔をしながら反応してくる。

「何だいきなり、今から出るだろ。っつーか、腹が立つってどういう事だよ?!」

「そういう事じゃない。二度とこの部屋に入ってくるなと言ってるんだ、お前の顔は当分見たくない」
と、自らが発した腹が立つ発言に対する返答には耳を貸さず、二度と部屋に戻ってくるなという言葉のみを投げ付けた。


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