□追慕
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いつもの様に文次郎と取っ組み合いの喧嘩をし、その傷を治療してもらう為に俺は今、伊作の居る医務室へと足を運んでいた。

手当てをしてもらいたいというのは、もしかしたら口実に過ぎないのかもしれない。
ただあいつの顔が見たい…そんな理由も多分にあるんだろうと、そう思う。


医務室の戸を開けると、どこかいつもと違う雰囲気を醸し出している伊作の姿が見えた。
伊作は俺が入ってきた事に気付くと、さっきまでの雰囲気はどこへやら、いつもの穏やかなそれに戻っていて。
「もう、留三郎。また怪我したの?」と呆れ顔で言ってくる。

「文次郎と喧嘩してたから」と俺が返すと、伊作の周りの空気が変わり、本人も少し寂しげな顔になっている。

俺はそれを訝しく思い、

「伊作、もしかしてお前文次郎と何かあったのか?俺が入ってくる前から様子が変だったみたいだし」

と問うと、伊作は少し言い淀んだ後、ため息をついてこう答えた。

「やっぱり留三郎には隠し事が出来ないね。実は、昨日…さ。文次郎に…振られたんだ。『悪いが、俺には既に心に決めた奴がいる。だから、お前の気持ちには答えられん。だが、今後も俺の大事な友人である事は変わりはないからな!!』ってね…」

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