□思い違い
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元の二人に戻ってから暫く沈黙が続いたが、
「追い掛けなくていいのか?
好きなんだろ、もんじの事」
と小平太が言ってきた。

「何故分かった?」と問えば、
「さっきの焦りっぷり見てりゃ誰でも分かるよ」と苦笑しながら言ってきて。
そんなに分かりやすかったのか、と自嘲しながらも、私は迷っていた。

誤解を解かず、文次郎とは友人として付き合っていくのか、それとも想いを今伝えて玉砕するか。
さっきの反応からして、文次郎は私に恋愛感情などは持ってはいないだろう。

ただ、私の行きどころのないこの気持ちはいつか爆発してしまう。

どちらにせよ振られてしまうならば、今言ってしまった方が良いのではないかとの結論に達し、小平太に礼を言うと文次郎を追い掛け始めた。



文次郎は、いつも会計委員会が使っている池の前ですぐ見つかった。
どうやらまだ気付かれてはいないようだが、あぐらをかき、何故か泣いているように見えた。

文次郎、と声を掛けると、泪の後を袖で拭いながら、「何だよ、誰にも言いやしないっつったろ」と返してくる。

「何故泣いている…?」と問い掛けると奴は黙り込むばかりで。

「文次郎、私はお前を恋慕っている。
小平太は私の顔に付いた睫毛を取ってくれただけで、お前の想像していたものとは違う。
私はお前とそういう関係になりたかった。用はそれだけだ」
とだけ言い、その場を立ち去ろうとした。
その場に居ると、きっと振られるだろうと泣き崩れてしまうに違いなかったから。

が、何故か文次郎が腕を引き寄せ、私は奴の胸の中へと抱き寄せられた。
突然の事に戸惑っていると、
「さっきの話…信じて良いんだな?
小平太がお前とできてるって思ったら、すげえ悲しくて、泣きたくなって。
だから、さっき泣いてるのをお前に見られて、どうしようかと思った。
本当は祝福したくなどなかったんだ。
俺は、お前の傍に居て色んな表情を見てみたい、お前に欲情してる。多分、これが恋なんだろう?」

私は苦笑しながらも、「ああ、お前も私に恋しているのだな。」と返すと、文次郎の顔は耳まで真っ赤になって「悪いか、バカタレィ」と呟く。

一時はどうなる事かと思ったが、結局私達は両思いだったらしい。

そして、私と文次郎が恋仲だと広まるのはすぐの事だった。
どうやら小平太が至る所で話しまくったらしい。
私の後押しをしてくれたのは有り難いが、これは何か仕返しでも考えるべきかも知れないな。

END.
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