‡Imitation Bёauty ‡

□‡Imitation Bёauty 3‡
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KAGE,KAGE様
キリ番くんはドS記念
      Short Story. 

‡Imitation Bёauty 3‡ 


1歩足を踏み入れればそこは引き返す事を許さない。 
復讐と欲望にまみれたオレには純粋だったあの頃が遠く眩し過ぎた。
 
 
「ん…祐…あっ…」
 
 
キャンドルだけが灯された部屋に妖艶な香りが漂う。 
それは甘く淫欲の限りを尽くさせオレを惑わせる。
 
 
「祐…す…きっ…好き」
「…。」
 
 
欲望に潤んだ瞳で愛を呟く女にあの頃の自分が重なって見えた。
 
そんな幻想をかき消したくて女の首に顔を埋め、強く身体を抱く。
 
 
好きなんて囁くなよ。
そんなあやふやな感情、どうせすぐ無かった事にしちまうんだろ?
 
時間が経てば忘れる戯れ言吐いてんじゃねぇよ…
 
 
「あ…愛し…て…」
「…黙れよ…」
 
 
ぬるついた足を絡ませ、聞きたくない言葉を囁こうとする唇をキスで塞いだ。
 
欲望を解き放つ昂揚感はすぐに醒め嫌悪と後悔に取って代わる。
 
満足気に横たわる女から視線を逸らし、手探りで見つけた煙草をくわえライターに火を点す。


カチリと無機質な音を響かせ点される火は、オレの心を表すように揺らめいていた。
 
 
『ずっとオレの傍にいてくれるよね?』
『そんなつもりじゃないから。フフッ…誤解させたんならごめんね。』
 
『愛してる。』
『やだぁ冗談でしょ?勘弁してよ!』
 
 
こんな夜はいつも、消せない記憶の欠片がオレを苦しませる。
 
 
あと幾つこんな夜を過ごせば忘れられるのか…
 
何回復讐を繰り返せばこの渇きは癒されるのか…
 
 
キャンドルの火が滲む。
いつの間にか涙が溢れていた。
 
 
「ハハッ…馬鹿みてぇ…」 
 
自嘲気味な笑いを洩らし1人呟く。
女はそんなオレに気づくことなく、静かな寝息をたてている。
 
安らかな寝顔はこの後オレに捨てられる事など知らず幸せに満ちていた。
 
 
この女はあの女達とは違うだろ?
それでもお前は傷つけて構わないのか?
 
…知るか。
女は女。
誰だって同じだ。
そうだろ?
 
 
あの頃のオレがオレを責める。
 
煙草を乱暴に灰皿で揉み消すと、荒んだオレを嘆くようにジュッと乾いた音がした。
 
 
今更、もう戻れねんだよ。…あの頃のオレには。
 
 
END.

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