‡Imitation Bёauty ‡

□‡Imitation Bёauty 1‡
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>KAGE.KAGE様
相互記念 Short Story.
 
‡Imitation Bёauty 1‡


望む物を手に入れたはずなのになんで心は満たされないんだ?
 
 
「祐くん?」
 
 
オレは撫でるように伸ばされた女の腕を払うと1人ベットを抜け出した。
 
キッチンの冷蔵庫からミネラルウォーターを取り、一気に煽る。
 
唇から零れた滴を乱暴に腕で拭うと、窓辺から朝靄に煙る街並みを見下ろした。 
 
今までオレを嘲笑った女共を見返す為に顔を変えた事に後悔はない。
 
あの日から人生は180度変わったんだ。
 
女共は華に誘われる虫のように次から次とオレに吸い寄せられる。
それが罠とも知らずに…とんだお笑い草だろ?
 
初めは楽しくてしょうがなかった。
目の色を変えてまとわりつく女共を抱いては捨てる毎日。
 
 
「何でだよ…」
 
 
苛立ちで視界が歪む。
無意識に力を込めたボトルが軋んだ音をたてた。
 
その音がまるで自分の心が発した悲鳴のようで余計に苛立つ。
 
 
復讐を果たせば晴れるはずの心は今も淀んだまま。
 
 
傷ついた女の瞳の中に昔のオレを見る度に心が騒めきだち動揺してしまう。

いつからだろう。
そんな自分に気づいたのは…。
オレはそれを見ないふりし続けていた。
 
 
なぁ…どうすれば満たされるんだ?
 
どうすれば心は晴れる?
 
 
窓に映る今の自分に問いかけてみても答えは出ない。 
 
このまま復讐を繰り返していればいつか心は晴れるのか。
 
それとも本当のオレを受け入れてくれる女を求めているんだろうか。
 
 
…馬鹿馬鹿しい。
そんな女いるわけない。
 
でも、もし居たとしたら… 
まだくだらない夢見てるのかよ?
そんなの絵空事だ。
今の自分を見てみろ。
世の中、外見1つで女が寄ってくる。
 
 
自嘲気味に微笑んだその時、寝室から女の呼ぶ声が思考を遮った。
 
 
「ああ…今、行く。」
 
 
オレは朝日に輝きだした街並みから隠れるようにカーテンを引いて、気だるげに返事を返す。
 
 
心は空っぽのまま…
癒されない渇きを秘め、復讐と言う名の欲望を吐き出す。
 
今日もまた、オレの罠に誘われた女共を招き入れる。少しでも渇きが癒されると信じながら…。
 
 
END.

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