それっきりのお話
□豆まきの戦い
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《豆まきの戦い》
部屋の中。
ヘルメットやゴーグルと、頭部を中心に赤を基調に武装した男女のグループが輪になって向かい合う。
それぞれ片手には、何かが入った袋を掴んでいる。
「準備は、いいか?」
赤いヘルメットを被った男が、声に緊迫感を含んでその場にいる全員に向かって聞く。
「バッチリだぜ!」
「いつでも行けるわ。」
頷くと共に、何人かが意気込む。
「よし。我ら赤組の名誉にかけて、青組に勝つぞ!」
輪の中心に向かって全員が方手を差し出す。
次いで、オーッと掛け声を上げてると、全員部屋から出て行った。
部屋を出た先は、体育館のような所に繋がっていた。
体育館の壁の5メートル上には観客席があり、客席はほぼ全て埋まっている。
赤組が部屋から出て来ると、声援が飛んできた。
そのまま壁際に列んで整列すると、その反対の壁際に、今度は青を基調とした男女のグループが、声援と共に整列。
「両者代表、前へ!」
観客席側から、首からホイッスルを下げた審判が声高らかに告げ、青組・赤組の各代表が前へ出て向かい合う。
「今年は負けないからな!」
「はん。こっちこそ負けるか!」
ニヤリと笑うと、握手を交わす。
「準備は良いですかな?両者位置について!」
代表が壁際に戻ると、各グループが手に持っていた袋に手を入れる。
「それでは、始め!」
審判が笛を力いっぱい吹く。
「鬼は外ォ!!」
「福は内ィ!!」
赤組・青組の全員が同時に袋から手を出し、中身を思いきり投げた。
宙を飛び交ったのは香ばしく煎られた豆。
客席からは、割れんばかりの歓声がビリビリと伝わる。
どちらも一歩も引かずに、次々と豆を投げ付けあう。
「福は外ー!」
「鬼は内ー!」
「うおおい!誰だ!?」
「間違えてる!間違えてるよ!!」
豆が防具や床にぶつかってリズムよく跳ねる音は、音楽のように聞こえる。
今年も始まった、一日だけの長くて短い戦い。
さあ、勝つのは一体どっちだ!?