それっきりのお話


□お月見
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お月見


夜も遅い時間

風呂を済ませて、もう寝ようかと思った頃に、控え目な声が玄関から聞こえて来た。

「お、お月見下さい…」

あまりに小さな声だったから、聞き間違いかと思いつつも、確認のために覗き窓を見る。

「こんな遅い時間に…」

ドアの先には、内気そうな小さな男の子が一人で立っていた。

親は何を考えているのやら…

そんな事を考えながらドアを開けてやる。

「!?」

「あ…」

「…ボク、お月見が欲しいの?」

「うん。」

「わかった。今持ってくるから、ちょっと待っててね?」


なんとか平常心を装って、男の子を玄関に招き入れてやると、お菓子を取りに、居間へ向かう。


「…落ち着け自分…」


自分が目にした光景を思い出して更に頭が混乱する。


「し…尻尾があった…」


そう。
先程招き入れた男の子のお尻からは、尻尾が飛び出ていた。

とりあえず落ち着く為に深呼吸をしてみる。


…うん。いい感じ。


あの子はお月見が欲しくて来ただけで、きっと無害だと思う。


うん。きっとそうだ。


落ち着いた所で、今日の夕方、お月見を求めて来た子供達の為に用意していたお菓子の余りを袋に入れていく。


これだけあれば文句はないでしょ!


手に持った袋を見て、1人頷いてみた。
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