お話小箱
□日だまりの中で…
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その後、セリスと俺はコーリンゲンをふらりと散歩してみた。
散り散りに別れたあの日から今日まで何があったりしたのかを互いに報告しあいながら。
セリスの身の上話を聞いていると彼女を大人に変身させたのは月日の流れだけではないと解った。彼女の意志や周りの環境が彼女をそう成長させたのだ。
「セリスは随分大人になっちまったなぁ?」
「え?どうしたの?急に……。」
少し顔を赤らめて俯くセリスはとても可愛く、俺をノックアウトさせるのに時間はかからなかった。
「可愛い」?いや、「綺麗」と言う方が正しいかもしれない。
セリスの成長した一面を見つける度に俺の感情は高まるだけになっていく。
(セリスの傍に居たい。)
散歩中、俺たちはいつの間にか手を繋いでいて互いにそれを絶対に離さないでいた。
魔大陸での後悔を二度としないと誓うかのように……。
特に俺は「セリスの傍に居たい。」と言う思いから握る手の力が強くなっていった。
「ロック?どうしたの?」
俺の異変に気付いたセリスが俺の顔を心配そうに覗き込んできた。
そのちょっとした上目遣いの表情が何だか艶っぽくて一瞬ドキッとさせられた。
「ねぇ、やっぱり、何か変よ?すぐ戻って休もう?」
「何でもねぇよ。もし、俺が今、変だったとしたら、それはセリスの所為だ。」
「えっ?」
俺は繋いでいるセリスの手を自分の背後まで引き胸で彼女を受けとめるとそのまま抱きしめた。
「ロックっ?!」
セリスは腕の中でもがいてみせたがすぐに諦め大人しくなり、俺の背中に手を回してきて俺のことも抱きしめた。
再び薔薇の香りに包まれた。
「もう、何処にも行くなよ…。」
「ロッ…ク?」
意味が解らないのかセリスは戸惑っていた。
それを感じた俺はもう一度今の気持ちを言葉に出した。
「もう、大切な人を失うのは御免なんだ。だから、もう二度とこの手から離れないでくれ……。」
意味を理解したらしくセリスは小さく頷いてくれた。
「私、何処にも行かないよ。今度こそ、離れない!」
そう決心したように言ってきたセリスは強く俺を抱き締めた。
穏やかな日だまりに包まれて俺たちは二度と離れない事を誓った。
――――その光はまるで俺たちを護るように包んでいた――――
end.