お話小箱
□バレンタイン
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セリスはバレンタインデーのために用意したチョコレートとピアスをソファのそばにあったロックの本が置かれていたテーブルにそっと置き、もう一度ロックを見た。
まだ、ロックは本を被ったまま。
セリスはそっとロックに顔を近付け耳元で囁いた。
(聴いて欲しい……
でも、やっぱり……聴かれたくない……でも………。)
「ロック、ダイスキ。」
セリスがロックからごくわずかに離れた瞬間――
ロックは顔から本を除け上体を起こし素早くセリスの片腕を押さえて自分に引き寄せた。
一瞬の出来事でそれに追いつけないセリスはロックのなすがままになっていた。
「よく、言えました!」
「へっ?」
ロックの顔を見上げて見ると、ちょっと赤くなっている気もしなくないその顔は優しい笑顔をセリスに見せていた。
「―――っっ!ロック!お…起きてたの?!」
「あぁ、別に寝ちゃいねぇーよ。」
「やっ!ヒドい!」
「なぁ〜にが?セリスが勝手に寝てるって思い込んでたんだろ?」
「―――――っっ!!!」
ロックはニヤニヤしながら自分の懐でもがくセリスを優しく抱きしめ直しセリスの真っ赤になっている耳元に顔を近付け囁いた。
「セリス、俺も、ダイスキだよ。」
ロックのその、甘い声にセリスは大人しくなる。
そして、その、甘い言葉に体中がこれ以上に無いくらい紅く染め上げられているのを感じた。
「セリス、真っ赤だな!(笑)」
ロックは笑いながらセリスを軽くからかった。
「だ、誰の所為よっっ!」
「ん〜?俺のせい♪じゃ、ついでにもっと紅くしてやるさ。」
そう言うとロックはセリスの頬を片手で押さえ自分に向けると目を閉じる瞬間すら与えずキスを贈った。
贈られたキスは暖かく、優しかった。
「これは俺からのバレンタインの贈り物。」
セリスが受け取ったロックからの贈り物―――
それは、ファーストキス
ロックの予告どおり、セリスが更に紅くなったのは言うまでもない――
end.
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