お話小箱
□Christmas Time
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――12月――
首都ベクタではクリスマスを迎える為にあちらこちらの店や人々の活気がみられていた。
何処を見ても赤や緑、キラキラ輝くオーナメントたち…街中がクリスマスの雰囲気に溢れていて中でも城の前にある大きな木にはベクタ住民たちによって沢山のオーナメントたちが飾られ巨大なクリスマスツリーが存在感を表していた。
その巨大ツリーはセリス将軍の寝室の窓から真正面に見えていて窓のふちを額縁にたとえたらクリスマスツリーの写真か、絵画を飾っているように見える。夜になるとイルミネーションが輝き、それはきらびやかなものに変身した。
セリスは毎年この時期になると街の活気につられてわくわくするような気持ちになり、時に自由に表を歩くことが出来ず、拘束に対する鬱々とした気持ちになり自分の気持ちのムラに時折苛立つこともあった。
(クリスマスなんて・・・。)
今日は後者の気分らしく表情を曇らせながら外を眺めている。
(私がフツーの女の子だったら・・・?)
自分が一軍人ではなく民間人で、普通の少女として暮らしていたら・・・そんなことを時々想像してみる・・・が「普通の生活」を知らないこの少女はいつもここまでで止まり自分の「普通の女の子」の姿を想像できないでいた。
(せめて時間制限があっても良いから、自由に外を歩いてみたい・・・。部下が着いて行列になるんじゃなくて、一人で好きに歩いてみたい・・・。)
そう思い始めるとどうしても外に出たくなる。
過去に一度夜中の脱走を試みたがあっけなく見回りの兵士に見つかってしまい1週間の謹慎を受けたことがあった。
(今度は見つからないように・・・なんとか出たい!)
セリスは自由な時間は常に窓を見ていた。それは兵士が巡回する時間を確実に把握するためだった。
(大体の間隔はわかって来ている。)
コンコン
部屋のドアがノックされた。
「ハイどうぞ。」
「セリス、部屋に居たのかい?」
「シド博士・・・。」
シドと呼ばれたこの初老の男性はセリスが魔導研究所に来てから親のような存在としている人物でセリスの唯一の理解者だった。
「ケフカ将軍とレオ将軍が探していたぞ。来週のコーリンゲン侵攻に関する作戦会議をするそうだ。」
「そうだったわ。今、行きます。」
セリスは大人しくそういうとシドと一緒に自室を後にした。