お話小箱
□ヤ・キ・モ・チ5〜初恋〜
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「なぁ、ちょっと外歩かねぇか?」
ロックは席を立ちセリスを誘った。
セリスは黙って席を立ちロックに従う。
港は帝国兵が数人番兵として見回りをしていた。
セリスは「首」を狙われているため兵士たちの目に止まらないように二人は林の方へ入って行った。
「ここら辺なら奴らの目も届かないだろ・・・。」
そういうとロックは木の幹を背もたれに腰掛ける。
セリスはその向かいで立っていた。
「話は何?」
セリスは緊張しながら、強張った表情でロックに問いかけた。
「・・・あのな、俺にはある迷いがある・・・。俺には決着をつけなくてはならない過去がある。」
「どうしたの?急に・・・」
セリスはあまり意味が分からずロックに聞きなおした。
「まぁ、良いから聞いてくれないか?」
そうセリスを宥めロックは話を続けた。
「数年前まで俺には恋人が居た。」
―ドクン!ドクン!−
「恋人」と聞いてセリスの心臓がショックに耐えられないかのように高鳴り締め付けられそうになる。
「コーリンゲンに居たときに居た恋人で名前はレイチェル・・・。
俺の所為で魂はもうこの世には居ない・・・。」
「・・・魂・・・は?」
「そう・・・肉体はコーリンゲンで眠っている・・・帝国兵に殺された時のままで・・・。」
「?一体どういうこと?」
「コーリンゲンに変な薬作るのが得意な奴がいてさ、俺は彼に頼んだんだ。レイチェルの魂を呼び戻すまで眠らせておいてくれって・・・。」
「・・・・・。」
セリスはショックの表情を隠せなかった。
(ロックには恋人が居て、彼女の魂が彼女に戻ったら・・・。)
セリスはもう、ニーナに出していた「ヤキモチ」どころの気持ちは無かった。
「自分は絶対にその人にかなわない」と身をもって感じてしまった。それと同時にショックを受けたことで自分のロックへの想いを真正面から受け入れそれがどんな気持ちなのかも理解することになった。
でもそれはとても苦しくてつらい気持ち――
処刑の前夜を過ごしているほうがもっと気が楽だったと思える・・・。
「でもな・・・」
「もぉいい!もぉ聞きたくない!」
ロックが続きを話始めたとき、セリスはこれ以上苦しくなりたくなくて思わず叫んだ。