お話小箱

□ヤ・キ・モ・チ3〜混乱〜
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顔をあげて呼ばれたほうを見るとそこにはマッシュが心配そうな表情で立っていた。

(・・・ロックじゃないんだ・・・。)

「マッシュ・・・。」
セリスは涙を拭きとり、無理やり笑顔を作ってみせた。

「セリス、大丈夫か?」
「え?」
「だって、オマエ、泣いてたろ?」
「・・・。」
泣いていないといえば嘘もいいところだ。既にマッシュに涙を見られている。

「・・・大丈夫よ。私、自分でも何で泣いているのか良く分からないの。へへへ・・変でしょ?」

セリスの自嘲してみせる姿はとても痛々しい・・・。
マッシュは女心は良く分からないが少なくとも今、セリスがロックのコトで恋の悩みに苦しんでいることは手に取るように分かる。

おもむろにマッシュはセリスの横に腰掛けた。

「なぁ、セリス、俺の昔話なんだけど、してもいいか?」
「え?えぇ・・・。」
「昔、俺はある国の女の子が好きだった。でも、アニキもその子のコト好きでさぁ・・・。ほら、アニキは昔からあぁいう感じで居たからすぐにそのコと仲良くなって俺はそれについていけなくて、で、最後はアニキはその子を彼女にしてた。俺は、何一つ手出しできずに終わったんだ。」
「・・・なんか、想像つくわ・・・。」
「フッ・・・だろ?でも、俺はすげぇ後悔した。アニキと真っ向勝負もしないうちに逃げたんだよ。」
「・・・・。」
「セリスには俺と同じ思いはして欲しくねぇな・・・。」
「・・・?」
セリスは意味が分からなかった。
「マッシュ、それどういう意味?」
セリスは顔を上げてマッシュにまじまじと聞いてくる。
そんなセリスをみてマッシュは軽く笑い、
「そーゆー意味!」と言いながら空に浮かぶ白い月を仰いだ。

セリスは全く分からないで居り、変な顔をして首をかしげた。

「泣き止んだな。」そういうとマッシュはセリスの頭をくしゃくしゃに撫でる。
「・・・うん。私、何で泣いていたのかわかんない。後ね、あの人とロックが一緒に居るのを見ると
ダメなの・・・なんか腹が立って・・・。」

「そういうのなんていうか教えてやろうか?」
「?えぇ・・」
「やきもちっていうんだぜ。」
「や、き、も、ち?」
「あぁ。ここまでくればなんで、そんな感情が出るのか自分で解るよな?」
「・・・・。」
セリスはしばし俯いて沈黙した。



「・・・私が、ヤキモチ?」
「あぁ、そうだ。」
「・・・私・・・ロックのコト・・・」
「やっと気付いたのか?」
「・・・まさか!ロックは私の命の恩人。そしてこの旅の仲間・・・。ただそれだけよ!」
「本当にそれだけか?」
マッシュはイタズラな笑顔でセリスに尋ねた。
「そうよ。それだけよ!」
「本当はロックをニーナにとられるのが怖いんじゃないのか?」

(ズキッ・・・)

マッシュの一言はセリスの心臓を一突きにしたようだった。

「・・・そ・・・そんなこと・・。」
「無い?」
マッシュは更に突っ込む。
「・・・わ・・・解らない・・・。私、解らない!!!」
そういうとセリスは両手で頭を抱えて伏せてしまった。

「わりぃ・・・セリス。混乱させちまったな。」
マッシュはセリスの混乱して取り乱した姿を目にしバツ悪そうな表情で誤りながらセリスを抱きしめた。
「ごめんな、セリス。混乱させるつもりじゃなかったんだ。」

マッシュの腕の中はとても安らげる場所で、セリスはすぐに落ち着きを取り戻す。

マッシュはいつもセリスに安らぎを与えてくれていた。

マッシュはセリスを腕の中に守り優しく頭を撫でる。それがセリスが落ち着く方法と分かっているから・・・。

「・・・もう大丈夫。ごめんね。マッシュ・・・。」

「いや、俺が悪かったよ。」

「もうちょっとこのままでいい?」
「あぁ。セリス姫のお気の済むまでどうぞ。」
マッシュは冗談交じりに言ってみせた。
「ふふふ・・・」
場の空気が穏やかに戻る。
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