□story3□

□愛しい青
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現代兄神




届かなかった
あなたの頬にそっと手を触れてみたら
意外と冷たくて
あなたが実は冷え性だったなんてことに今更気づいた

だっていつも
寒さなんて感じさせない
そんな顔で笑っていたから

私はあなたを
私が思っていたよりもわかっていなかったのかもしれない

だってわかっていたのなら
あのとき、
あなたの手を握り締めて
少しだけでも温めてあげられたかもしれなかったのに



***



「かーっ寒いね神楽」
「だから朝言ったアル。今日は寒いヨって」

窓を開けたらいつのまにか冬はもうそこまで来ていたらしい。
寒い朝の独特のにおいは朝が苦手な二人には不機嫌になる不愉快な要素しか含まれていないようで。
神威はマフラーも手袋もしっかりと装着した神楽の姿を恨めしそうに見つめる。

「そんなの聞いてないんですけど」
「言ったヨ。お前が便所で寝てるときに」
「それ聞いてるわけないじゃん」

ふと横に目をやると確かに非常に寒そうに体を震わせている。笑っているけど。
学ランは着ているものの中はタンクトップ。
いくら不良のファッションセンスといえどもそこまで無理して唇を青くするならば誰も怖がりはしないだろう。

「・・・馬鹿じゃないアルか、なかみタンクトップって」
「だって寒いって聞いてないし」
「いやだからってもうそろそろ模様替えの時期ネ。これだから真の馬鹿はあなどれないヨ」

ぷっくりと不服そうに膨らんだほっぺたは赤く染まっている。
さすがに可愛そうかと思いそっと手に手袋を押し付けた。

「え、なに、くれんの?」
「ん」

寒そうだから、と一言付け足しておく。顔は見ない。恥ずかしいから。
しばらくの沈黙のあとに冷たいものがひんやりと手に触れた。

「いらない」
「え?」

その氷みたいな冷たさが神威の手だと気づくまでには少し時間がかかった。
こんなに冷えていたとは。
神威の手よりも温もりを帯びた自分の手にすばやく手袋がはめられる。

「そんなにギンギンに冷えてるのに、お前のほうが手袋いるダロ」

そっと神威をばれないくらいに盗み見をした。
そしたらばっちりと目が合ってすぐさま目をそらす。
でも一瞬見た顔はひどく優しく微笑んでいた気がした。

「手つないでくれたらあったかくなるかも」

そう言って容赦なく自分のポケットに神威の手が進入してくる。
驚いて手を出そうとしたらしっかり握られていて、まったく動かない。

「・・・。だからてぶくろ」
「じゃあ貸して」

その途端ポケットの中の神威の手はするりと手袋を奪って、ポケットに入っていないほうの手にはめた。
ポケットの中はさっきよりもあったかくて、それでも神威の手はひんやりしたままだった。
それがなんとなく不安で、ほんの少しだけ手に力を入れたらしっかりと握り返してくる私よりも大きな手。

「手だけぬくくしても意味ないアル。風ひくヨ」
「ははっだいじょうぶだよ、こんぐらい」

「ああでも」

詰まった言葉にもう一度だけ神威の顔をそっと覗く。
今度はこっちは向いていなかったけど、その顔はひどく寂しそうで、この手くらい、凍えていた。


「さむいって、さみしいね」


何を見ているんだろう
どうしてそんな顔をするんだろう
何の寂しさに凍えているんだろう

昔一度だけ、このようなことがあった気がする。
あの時も神威はこんな顔をして薄く笑いながら、言った。

どうして伝わらないんだろう、と。

別に他の人と大きく違うわけじゃない。
確かに神威も私も、人より少し強いけど。
それは欠点じゃなくてむしろ、長所だった。そうしていかなきゃだめだった。

でも、勘違いされすぎたね

やっぱり強いって言うのは、必ずしも美徳じゃなかった。
何かを守るために振るった力も、認められはしなかったんでしょう?

そのあたりからか
神威がだんだん毎日違う女を連れ始めたのは。
神威は特に細かいことは言わなかったけど、多分たくさん傷ついてきたんだ。
そしてもしかしたらそれは、私のためにだったのかもしれない。


「・・・ウン、そうネ」

本当に誰も気づけないぐらい、小さく微かに震える神威の手をポケットの中でぎゅっと握った。

「・・・神楽の手、冷たくなっちゃうよ」
「関係ないアル。もうとっくになってるし」

あなたの孤独に少しでもこのぬくもりが伝わるように。
あなたの冷たさが少しでも私に移るように。
笑い声が聞こえたから見てみると、やっぱりタンクトップは寒そうで。

それでももう、神威の手は震えていなかった。



***



「・・・神威、ちょっと」
「んー?」

上目で手をちょこちょこと振るのは顔を寄せろというサイン。
このまま抱きしめてもいいかと思ったけど殴られそうだからやめといた。

神楽の目の高さまでかがむと、ほんのちょっと照れくさそうに目をそらす。
(ええーなにそれかわいいんですけど)
やっぱり殴られてもいっかと思って手を伸ばした瞬間、

「!?」

首もとが何かに覆われた感覚。
よく確認すると神楽の赤いマフラーが神楽と俺をつないでいる。
絶対に目を合わせない少女の頬はりんごみたいに真っ赤になっていてかわいかった。

「今日のマフラー、長すぎただけネ。勘違いすんなヨ」
「ははっ」

あったかい

さむいって、さみしい
けど
寒さがこんなやさしい温もりを与えてくれるのならば
これはこれでいいかもしれない

俺だけじゃない
君も一緒

お前も同じ痛みを抱えて生きてきたんだろう

俺の手が冷たくても
お前の手が暖めてくれる
だから
お前の心が凍えたときは
俺が抱きしめてあげるからね

「神楽」
「・・・ん?」
「あったかいね」
「・・・、うん」

「あったかい」


ふたりで見上げた空は秋晴れと冬空の中間で
とってもきれいに澄んでいたね



***


「神威ー」
「お兄ちゃんでしょ」
「糞兄貴ー」
「いらっ」

すぐに調子に乗る神楽の頬を軽くつねるとそのまま碧い瞳がこちらを捉えた。
やっぱりこの目にはかなわない。

「今日はクリームシチューするから」
「おっいいね」

「だから」

「寄り道せずに帰って来いヨ」

ああこの瞳は
この空だ
いつだって俺を包み込む
それはそれはきれいな、




「ああ、もちろん」





愛しい青







***


すみません↓
めっちゃ久しぶりの更新で文章力半端なく落ちてますよね汗
なんか暗いし分かりにくいですが大丈夫ですか!?即興で作っちゃったから・・・汗
短いですw

一応昔神楽とかを守るために力を振るってたおにいちゃんですが、それをわかってもらえずに寂しくてグレたと。
だけどやっぱりそれもどこかで違和感を感じていて、結局神楽に救われたと。

・・・またもっと明るいの書きますね!
今日はこのへんで♪
ありがとうございました^^










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