□story3□
□花言葉リレー
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吉原で鳳仙を倒したあの日からたまに通うようになったこの星には、
俺の大事な秘密の居場所があるからいつも
地球に来る時だけは阿伏兎についていくようにしている。
「今日も来んのかィ」
「ああ、行く行く」
怪しそうに横目で見ながら阿伏兎は邪魔だけはするなといつものように小さく零す。
邪魔なんてするものか。
だって阿伏兎のする仕事になんか全く興味がないんだからね。
今日だってホラ、
「銀ちゃーん!」
あの少女は、小さな町で笑っている。
時間がある限り神楽の行くところに付いていく。
いつものことながら神楽は何もすることがないらしく、酢昆布とやらをかじりながらふらふら歩き回っていた。
それを屋根の上からそっと眺める。
何が面白いのかと聞かれれば別に理由もないし
何かわかるのかと聞かれても別に何もわからない
だけど
神楽がいつもどうりに過ごしているだけでどこかほっとする。
もちろんそれは、いつか強くなったら俺が戦うためだよ。
神楽と戦う、そのため、だ。
ふと顔を上げれば、神楽が視界にはいなくなっていてはっとする。
しかしほんの少し顔を動かせばまだ見える距離に神楽の姿があった。
が
「天人・・・?」
何人かの天人に囲まれて、あまり穏やかじゃない雰囲気を醸し出している。
神楽は逃げる様子もなく、ただくちゃくちゃと酢昆布をかじりながら天人たちを睨んでいた。
まずい
神楽は強くなったから大丈夫だと言い聞かせるのに手に汗をかく。
屋根の上で勢い良く立った途端、
少女の周りの天人はみんなその地に倒れこんだ。
そうだ
強くなったんだね神楽
俺が手を出さなくても傷一つ付かなくなるくらい
そのまま屋根から少し離れた場所に飛び降りて、神楽の後ろを襲おうと走ってくる天人を全て倒していく。
「許さないよ」
「何にも知らないお前らが神楽を傷つけようだなんて」
「お前らがいるだけで、神楽は傷つくんだから」
きっと神楽は誰かを傷付けるたびに大きな傷を心に作ってしまってる
自分を襲ってきた奴であろうとなかろうと。
それは昔と変わらない
今も昔も、やさしい子だから。
一通り片付け終わったらもう阿伏兎が帰る時間だ。
そのまま神楽に背を向けて歩き出す。
まだ俺が出来る限り守ってやるから
強くならなくていいよ、笑って。
小さくぶつかった通行人からありがとう、って聞こえた気がした。
デュランタ:あなたを見守る