花咲く世界

□少女達の宴

「改めまして花鹿だ。宜しく。」
「あ、桃井さつきです!私の事は好きに呼んで下さい。」
「相田リコです。私の事もお好きに御呼び下さい。」
「堅苦しいのは止めてくれ!さつきは私と同い年でリコは私より年上なんだから!私の事も花鹿で良い!」
「え?同い年?」

花鹿の言葉に桃井が目を見開く。

「・・・・・もしかして黒子君と双子なの?」
「違うぞ?テツヤは私の一歳上のお兄ちゃんだ。」
「はあ!?ちょっと待って!?って事は黒子君は私と同い年って事!?」
「嘘・・・テツ君が・・・・私より年上?」

聞き耳を立てていた周りも意外な事実に呆然とする。

「テツヤはダッドの所為で入学が1年遅れたんだ。本当だったら今年は3年生になる筈だったのに・・・。」
「・・・・・本当なの?」
「私は嘘は言わない!悪い運を呼び寄せてしまうから!」
「カントク。知りたいのならうちの学校の生徒会室にある厳重にロックされている棚を見れば良い。その中にテツヤ様と俺の”本当の個人情報”が入っているから。」

彼女達の会話を傍観しているつもりだった灰崎がリコに口を出す。

「え?じゃあ、生徒会で見ていたあんた達の書類は・・・。」
「殆ど偽装だな。事情が事情だから犯罪にはならないから気にしなくて良い。」
「・・・・・嘘でしょ?」
「書類は嘘だけど俺もテツヤ様も気持ちに嘘はついていない。テツヤ様がバスケが好きなのも、キセキと仲が拗れたまま別れたくなくて誠凛に来たのも、誠凛を選んだ理由も何一つ嘘は言っていない。」
「成績誤摩化してるのはちゃんと言わなきゃ駄目だぞ!」

腰に手を当ててルマティが灰崎を嗜める。

「・・・・・陛下なんでその事を知っているんです?」
「テツヤから聞いた。シェイクもその時聞いた!」
「・・・・・・・いつの間に・・・。」
「何時かと言われれば由依が遊びに来た時か?その時の花鹿は由依に付きっきりだったからテツヤに構ってもらってた。それに花鹿以上にテツヤは中々独占出来ないからチャンスだと思ってな!」
「・・・・陛下・・・本当に花鹿様とリーレン様だけでなくテツヤ様も大好きですよね。」

悪戯っ子の様な笑みを浮かべているルマティに灰崎は頭を抱える。

「当たり前だ!テツヤは俺の初めての同性の友人だぞ?大好きに決まっている。」
「流石、リーレン様に水ぶっかけて”俺は花鹿もテツヤもリーレンも欲しいんだあ!”って言うだけありますね。」
「ちょっと待て。祥吾、何故それをお前が知っている?」
「そう言えばそうだな?あの時あの場所に居たのは俺とリーレンだけだった筈・・・。」
「テツヤ様の影薄能力ヤバいですね。」

2人の疑問ににっこりと笑みを浮かべて灰崎が答える。

「まさか!?テツヤがあの場に居たのか!?」
「本人曰く、ノックしても気付いてもらえなかったので普通にドアを開けて部屋に入ったのにそれでも2人が気付かなくて笑えば良いのか泣けば良いのか迷った。だそうです。」
「嘘だろ!?人が入って来た事自体気付かないなんて!」

誠凛メンバーやキセキ達は灰崎の言葉に思わず笑うが、リーレンだけはこの世の終わりの様に動揺している。
ファングループ総帥として教育されて来たリーレンにとって相手の気配が読めないと言う事は死を意味するのだから。

「仕方ないですよ。殺気無しの意識して気配を消している訳では無い存在感が薄い相手に気付けと言う方が無理ですよ。自身が無防備状態なら相手に違和感を抱かせないのがテツヤ様ですから。」
「・・・・人間誰しも空気相手に警戒はしない・・・か。」
「心配しなくてもテツヤ様は暗殺には向いていないですよ。その辺は脳筋思考なので。こそこそ隠れて殺すくらいなら、真っ正面突っ切ってサクッと殺す方が楽だと言っていたので。そういう理由であえて気配を隠すのは苦手だそうですよ?」
「殺しは駄目だぞ!」

リーレンと灰崎の会話を聞いていた花鹿が頬を膨らませて言う。

「例え話ですから大丈夫ですよ花鹿様。テツヤ様の場合敵を皆殺しにするタイプというより、敵を誑し込んで味方に引き込む方が得意なので。」
「・・・・・・まるで本当に敵を誑し込んで味方にした事が有る様な言い方だな?」
「俺からしてみればユージィン様よりテツヤ様の方が恐ろしいですよ。なんせ相手に一切触れずに誑し込んで落とすんですから。」
「・・・・・誰だ。」
「リーレン様も花鹿様も・・・ハリー様ですら知らない相手ですよ。」
「ハリーも?」

リーレンの顔が険しくなる。

「数年前にテツヤ様は自分の身を守る為と花鹿様を守る為にハリー様に内緒でとある組織を立ち上げました。」
「はあ!?」
「”諜報部隊黒鳳蝶”。リーレン様なら聞いた事があるんじゃないんですか?」
「黒鳳蝶だと!?」
「リーレン知ってるの?」
「俺がまだファン家の総帥をしていた時に聞いた事がある。只一人の主の為だけに存在する諜報部隊。そのメンバーは謎に包まれていると。そして彼等の協力者に王族や天皇が居るらしいとも。」
「え、そんなに誇張されてるんですか。噂。」

うわぁ・・・と、リーレンの言葉に顔を引き攣らせる灰崎。

「協力者にもメンバーにも王族天皇が居た覚えは無いんですけど・・・・。」
「お前は知っているのか?」
「まあ、俺もメンバーなので。ハリー様との契約は既に終了していますので俺の今の雇い主はテツヤ様ですよ。まあ、これから先、他の相手に仕えるつもりは全くないのでテツヤ様が最後の雇い主ですけど。」
「・・・ハリーはこの事を?」
「つい最近にテツヤ様がハリー様の秘密を本人に笑顔で暴露したついでに伝えてましたね。」
「ダッドの秘密?何それ。」
「花鹿様が知ったら怒り狂うであろう秘密です。」

不思議そうに首を傾げる花鹿ににっこりと笑う灰崎。

「私が知ったら怒り狂うの?」
「ええ。テツヤ様も知った当初はガチ切れしましたね。アリッサが止めてくれなければ確実に血の雨が降ってましたね。」
「・・・・アリッサ?」
「テツヤ様が俺を除いた一番最初にメンバー勧誘の為に口説き落とした女性ですね。」
「・・・・・ムスターファみたいに?」
「心配しなくても彼女とは男女の仲にはなっていないのでご安心を。彼女はただのテツヤ様厨です。」
「・・・・は?」

笑顔で答える灰崎に花鹿が呆気に取られる。

「簡単に言うと、テツヤ様信者です。彼女にとって最優先事項がテツヤ様のお願いやお強請りなんですよ。テツヤ様が呼べば例え仕事中でもテツヤ様の元に来ます。まあ、テツヤ様がそういうのを嫌がるので余程の事が無い限り仕事中に呼び出す事は有りませんが。」
「・・・・何だかクインザとユージィンの取巻きを思い出すな・・・。」
「「確かに。」」

カールの思わずと言った呟きにリーレンとルマティが同意する。

「そいつらより人間性は100倍程マシですよ。こっちの方が全員、種類は違えど怒らせると怖いですが。」
「そうなの?」
「精神的にも肉体的にも物理的にも権力的にも強い人達ばかりなので。まあ、詳しく知りたければテツヤ様に聞いて下さい。これ以上の事は話して良いと許可を取ってないので。」
「分かった。テツヤに聞く!」
「それより話しが大幅にズレてしまいましたね。すみません。・・・・サツキ達もまだ花鹿に聞きたい事があるんじゃないのか?」
「そうだ!私は2人とおしゃべりしていたんだ!」

慌てて花鹿は女子2人の方を向く。

「ごめん!話しが脱線した。また話し相手の続きをしてくれる?」
「ええ。勿論。」
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