performance
□収まらない衝動
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「あ。」
「え?」
出会ったのは、本当に偶然だった。
「灰崎君。お久しぶりです。」
「お、おう・・・。久しぶりだな、テツヤ。」
相変わらずの無表情で灰崎に声をかける黒子。
灰崎はぎこちなく挨拶を返す。
「えっと・・・そちらは?」
「あ、どーもはじめましてー。正邦の春日隆平だよ。」
「はじめまして。霧崎第一の黒子テツヤといいます。」
ぺこりと黒子がお辞儀をする。
「霧崎!?お前誠凛に行ったんじゃ・・・・?」
「転校しちゃいました。」
無表情だが、語尾に☆がつきそうな軽い口調で言う黒子。
ノリが軽いなおい。
お前そんなキャラだったっけ?
「お前本当に行動が読めねぇよ。」
はぁ、とわざとらしくため息をつく灰崎。
それを見た春日はくつくつと笑う。
「ところで灰崎くん、静岡にいるんじゃないんですか?福田総合に行ったって聞いたんですけど?」
「あー・・・おう、サボってる。」
「相変わらずの不良っぷりですね。ですが灰崎君、あからさまに目を泳がせるってことは嘘吐いてるってことになりません?」
「っ!」
相変わらず灰崎くんは嘘が下手ですね。
そう言って笑う黒子に、春日はこう言った。
「ラフプレーばっかの霧崎生には言われたくないね。」
プチッ。
黒子の中で、何かが切れた音がした。
“ラフプレーばかりの霧崎”
その言葉は、霧崎第一の生徒にとっては禁句であった。
なぜなら、霧崎生は皆、花宮達の優しさを知っているから。
確かにラフプレーをしているけど。
それでも。
花宮達の、本当の強さを知っているから。
「そうですか。じゃあ春日さん、貴方の体の傷はなんですか?喧嘩でもしたんですか?なら今から僕が貴方の学校の教師に“春日隆平は喧嘩ばかりする問題児だ”とでも言ってあげましょうか?ああそうでしたね、貴方いじめられてるんでしたね。今なら教師だけじゃなくて貴方のお仲間さんたちも貴方を信用しないんじゃないですか?よかったですね春日さん。一人ぼっちですよ。僕等がラフプレーばかりの霧崎生?貴方は霧崎の何を見ているんですか?花宮さんも原さんも皆皆優しい人ばかりですよ?僕等が入ってからはラフプレーの数も一応減ってますし、貴方にそう言われる筋合いはありません。それに僕等は確かにコート内では問題児ですがコート外では皆優しい男子高校生なんですよふざけないでください。」
「テテテ、テツヤ落ち着けって!春日さんもさっきの発言取り消してください!」
滅多に怒らない黒子の怒りを感じ、灰崎が慌てる。
一度黒子がマジギレしたのを見た事がある灰崎は黒子がマジギレする前に止めようと必死だ。
「・・・んで・・・・。」
「?」
「なんで知ってんだよ!なんでお前が俺が正邦でっ・・・!」
取り乱す春日。
黒子は不敵に笑い、こう言った。
「先程の発言を取り消してくれるのであればお教えしますよ、春日隆平さん。」
「っ・・・わかった。取り消す。」
苦い顔で言った春日。
灰崎はふぅと息をつくと、今のピリピリした空気から逃げようと後ろを向きかけた。
「逃しませんよ、灰崎くん。君もいじめられているんでしょう?」
ガシリ、と腕を掴まれる。
涙目になりかけた灰崎は、こう思った。
テツヤ、なんか腹黒くなってねぇ?
灰崎の必死の抵抗も、何かのスイッチが入った黒子の前では無いに等しく・・・。
灰崎祥吾と春日隆平は、近くのファミレスへと引きずり込まれていった。