花鳥風月

□零話
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どくどくと赤が自身の身体から流れ続ける。

「(何で僕は今地面に倒れているんでしょう?)」

身体が地面に張り付いた様に指一本ですら動かせない。

「(ああ、そうだ・・・いきなり後ろから突き飛ばされて・・・影の薄さで気づかれずにトラックに轢かれたんでしたっけ・・・。)」

痛みも麻痺しているのか自分の身体がどうなっているか全く分からずに黒子は最近の出来事を振り返る。

「(僕は死ぬんでしょうか?)」

人通りの少ない所な所為なのか、今の時間が夜だからなのか周りには誰もいない。
助けを呼ぼうにも呼べない状況を見て黒子は段々と諦めていく。
自分はもう助からないと。
此処で独りで死ぬと。

「(結局皆の誤解は解けなかったなぁ・・・。)」

こつっと、静かな空間に足音が響く。
そして其の足音は自分の元で止まる。
足音の主の足下が視界に入る。

「・・・・生きたいか?」

そう声が聞こえたと同時に視界に見覚えのある男の顔が入る。

「(・・・なんで貴方が此処に?)」
「んな事はどうでも良いだろ?それよりも俺はてめーに生きたいかそのまま無様に死に曝すかどっちかを選べって言ってんだよ。」

黒子の声に出していない言葉を何故か聞き取った男が眉間に皺を寄せて言う。

「・・・無理・・・で・・・よ。」
「何がだ?」
「・・・僕は・・・助・・・り・・・せ・・・。」

徐々に冷たくなっていく自分の身体を感じながら黒子が声を振り絞って呟く。

「だから俺は無理かなんて聞いてねえよ。生きたいか死にたいのか聞いてんだよ。」
「・・・・そ・・・は・・・。」
「ちっ!良いか?もう一度だけ言うぞ?てめーは生きたいか?悪魔と契約してでも。だ。」
「・・・・僕・・・は・・・。」
「答えろ!てめーはどうしたい?」
「・・・・・・・たいです。」
「ふはっ!上等だ。」

黒子の言葉に男・・・花宮真は何時もの笑みを浮かべた。
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