performance

□合宿開始
1ページ/4ページ













「お〜・・・デケェ〜・・・。」

高尾は、バスの窓からかなり大きな建物を眺める。

「征ちゃんがお父様に無理言って、ここを貸し切ってくれたそうよ。」

高尾の隣に座る実渕はニコっと笑いながらそういい、紙コップに入っていたコーヒーを飲み干す。

「でも、黒子別宅もこれくらいあるよな?」
「学校と同じ広さだもんな。」

目の前に見える建物を見て、現在自分達が住んでいる屋敷を思い浮かべた森山と宮地が言う。

「・・・・・今更やけど三つ子ちゃん、本当に金持ちやな・・・。」
「今吉先輩、違いますよ。僕達がお金持ちな訳じゃないですよ。親がお金持ちなんです。」
「そうですよ。私達はそのお金を使っているにすぎないんですから。」
「・・・そうかいな;」

今吉の言葉に冷静に返すテツナとテツノ。

「そういや、保険医と顧問が付き添いで来るって言ってたけど、いねーよな?」

ふと、思い出した様に灰崎が呟く。

「ああ、二人は用事があるので後から来ますよ。」
「そうなの?」
「はい。」
「各自降りる準備!」

花宮の凛とした声がバスの中に響き、ざわざわとしていたバスの中が静まる。

「忘れもんすんなよ〜。」

少し気の抜けたような宮地の声も響き、「はいっ」と元気な返事をした部員たちは席をごそごそと自分の荷物をあさったり椅子の下を確認したりする。

「ついたら前にいる・・・黒子か。黒子から降りてけよ。」
「あ、はい。」

一番後ろの列に居た花宮が黒子に指示を出す。
キ、という小気味いい音を立ててバスが停車する。
プシュ、というバス独特の音を立ててドアが空くと、まるで雪崩のように部員たちが飛び出していく。
そんなに楽しみだったか、という呟きと共に花宮がバスを降りると、実渕にとって見慣れた赤髪が霧崎のメンバーを出迎える。

「合宿に参加してくださってありがとうございます。霧崎の皆さんには、色々とご迷惑をおかけしました。先に体育館に並んでください。体育館は花宮さん側から見て右にずっと行って突き当りです。」
「お、おう、わかった。ウチで最後か?」

敬語で謝罪の言葉を述べる赤司に若干戸惑いながらも、花宮は小さな疑問を口にする。

「いえ、実はまだ僕等洛山と霧崎しか来ていません。まあ、集合時間は15分後ですから大丈夫だと思います。」
「そうか。じゃあ体育館に洛山の奴らいるんだな?」
「はい。」

赤司は花宮に返事をすると、目を伏せながら実渕に向き直る。

「・・・玲央、すまない。誤解を解くことはでいなかった。」
「えっ?」

赤司の謝罪に驚いた顔をする実渕。

「僕なりに全力を尽くした。親の手を借りないで、自分で解決したかった。たとえ玲央が洛山に戻ってくる気がなくても、玲央が戻ってきた時に安心して過ごせるような洛山に戻したかったんだ。でも、ダメだった。最初から僕の選択は間違っていたんだ。美姫をマネージャーにしたことが間違っていた。」

“僕が正しい、僕が全てだ”と言っていた赤司のあの強気な姿はなく、弱りきったような、疲れきったような声でそう言う赤司。

「大丈夫よ。なんだかんだ言って私、征ちゃんの近くにいると落ち着くし今の霧崎も大好きだもの。」
「・・・そうか。なら、いいんだ。さっきも言ったんだが、体育館には洛山のメンバーがいる。大丈夫か?」
「大丈夫よ!問題ないわ!」

パチリ、とウインクをする実渕。
赤司はそんな実渕を見ると小さく笑い、体育館方向へと小走りで行く実渕を見送る。

「お、赤司。遅くなって悪かったな。」
「ああ、秀徳の皆さんですね。時間には間に合っていますから大丈夫です。体育館は大坪さん達から見て右にずっと行った突き当りで―――・・・。」

次々に到着する参加校に体育館の場所を案内しながら、赤司は霧崎へと転校していった友人の姿を思い浮かべた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ