performance
□招待状
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「合同合宿、ねぇ・・・。」
顧問から渡された紙の束に目を通し、花宮はスゥと目を細めた。
参加校としてあげられている学校は、すべてが彼らの元居た学校。
顧問は既に参加すると返事を出したらしい。サインもしてあるし、印鑑も押してある。
人に相談もなしに勝手に決めやがって吊り目野郎。
部の顧問で新任教師でもある男を思い出す。
「どしたの?花宮。」
後ろから原が花宮の肩に手を回す。花宮は原の手を肩からどけると、短く答えた。
「合同合宿だと。」
「へぇ〜・・・ウチを誘うモノ好きもいるんだね。」
プゥ、とガムを膨らませる。
花宮は至近距離でガムを膨らまされたことが気に食わなかったのか、小さく顔を歪める。
「・・・そのモノ好きが問題なんだがな。」
花宮はハァ、と小さくため息をつく。
原は興味津々といった様子で、「どこのガッコ?」と言いながら花宮の手から資料を奪い取る。
パラパラとページをめくっていく原。“参加予定校”と書かれたページで、原の手が止まり彼の顔から表情が消える。
「・・・どういうこと?花宮。」
「俺が知るかよ。顧問に聞け。」
パン、とガムを割って真剣な顔で言う原。
「俺さ、もう宮地さんみたいに泣く人見たくないんだけど?」
宮地によく懐いている原は、秀徳との練習試合の後に一人で泣いていた宮地を見ていた。
ラフプレーをしたことに対する罪悪感なのか、仲間の変わった姿を見てしまった喪失感からなのかはわからないが、とにかく彼は泣いていた。
ラフプレーにも慣れ、変わらない仲間と共に過ごしている原にはその気持ちはわからなかったが、それでも宮地が泣いているところを見たときには胸が締め付けられるように痛んだ。
この人はきっと迷っている。けれど、自分は叱ってくれる先輩を失いたくない。
そんなことが頭の中をぐるぐると駆け回っていた。
「・・・泣こうと喚こうと、それが俺等の方針なんだがな。あの人達をおいていくことも出来るんだが、ご丁寧に部員全員参加って書いてある。」
“参加する場合は部員全員を参加させること。事情がある場合は事前に顧問又は監督に連絡し、ミーティング時に報告すること”そう書かれた部分をシャーペンの先でなぞり、心底めんどくさいといった顔で大きくため息をつく。
「そんなにため息ついてたら幸せ逃げちゃうよ〜。」
「うっせ。」
暗くなってしまった空気を晴らすようにカラカラと笑う原。
花宮はいつもの調子に戻った原に向かって小さく笑った。
「せっかく入ってくれた“ナカマ”だ、手放す方がおかしいだろ。“仲間”を苦しめた奴らには制裁を加えねぇと、なぁ?」
「もち、やるに決まってんじゃん!」
昼休み、人影もまばらな教室で原と花宮はニヤリと笑った。