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□転勤と転校
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「・・・ごめんね、征ちゃん。」
「いや・・・辛いのは玲央だろう。僕こそ・・・無力でごめん。守れなくて・・・。」
「いえ、いいのよ。それに、今回の転校はお父さんの転勤って理由もあるもの。」
「・・・・・・ごめん、なさい。僕が、僕が無力だったからっ・・・・・。」

帝王、と呼ばれる彼もまだ高校1年生なのだ。
主将という重い看板を背負って、無冠の五将と呼ばれた3人やたくさんいる部員を引っ張って。
きっと、すごく苦しんでいるんだろう。

私、実渕玲央は転校する。
理由は、お父さんの転勤。

・・・・けれど、それだけじゃない。

簡単に言えば、私はいじめられている。
私は女ばかりの家系に産まれた為、小さい頃から女性に囲まれて暮らしていた。
その為、口調や仕草、趣味等が身内の影響で女性的だ。
だからと言って自身が女だとは思っておらず、自分は男だと思っている。
ただ、あえて言うならオネエでなくオトメンなだけだ。
だけど、周りから見ればオネエにしか見えない為、良く勘違いした男の子達に小さな嫌がらせをされていた。
そしてその小さな嫌がらせが大きくなり、ごまかせないほどまで来たきっかけは・・・・

『皆さん、頑張ってくださいね!』

そう、この子。
白鷺美姫。

両親の仕事の関係で、いろいろな地方を転々としている女の子。
征ちゃんが“中学時代はいいマネージャーだったよ”と言っていたから、私達も信頼してた。
けれど、彼女が転入して3日目。
彼女が部室で、私のクラスメイトと性交をしていた。
部室で何してるの、とそこに入ると、美姫ちゃんは悲鳴を上げた。
“実渕先輩に命令された子が、私を襲った。女の子の私が憎いからって、初日からずっと続けられてた。”
彼女がそんな嘘を噂として流し、私は本格的に嫌がらせを受けるようになった。
お陰で周りからは完全にオカマ扱いだ。
他校と練習試合を組んだ日。
私の怪我は、袖のないユニフォームでは隠せないほどに酷い怪我になっていた。
征ちゃんは、洛山の中で唯一私を信じてくれた。
玲央がそんなことをするはずない。玲央は誰よりも優しいから。もう二度と間違わないと彼女達に誓ったんだ。
主将である彼が、“最低な”私のそばにいてはいけない。
そう説得して、私は征ちゃんを突き放した。
主将は、帝王は最低な奴のそばにいるのか、と自ら言った。
征ちゃんは、表だって私の味方をしないことを渋々承諾した。

「玲央、悪いな。転勤が決まってしまったんだ。」
「ごめんね、玲央。東京に引越しすることになったわ。」

突然、親にそう言われた。

「転校先は自分で決めてくれていい。それと、洛山の人達にはお礼を言っておかなくてはな。」
「い、いいの!私が自分で言うから!」
「そうか?」
「ええ、私、自分で言えるもの。もう高校生よ?」

そうして、私は洛山の教師と征ちゃんにだけ転校の旨を話した。
それで、冒頭の会話に戻る。











パラリ、と、机の上から高校の資料が落ちた。

「・・・霧崎第一、ねぇ・・・・。」


そういえば、まこちゃんが居たわね・・・。
誠凛にも鉄平がいたけれど、あそこのチームに入れる自信がないわ。


なんて思いながら、私は霧崎第一への転校を決めた。
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