performance

□気付いた矛盾点
1ページ/5ページ












俺は気づいた。
白鷺さんの証言が、少しだけおかしいことに。

確かに、白鷺さんは俺達が部室に入った時にはほぼ全裸の状態で、情事のにおいを濃く残していた。
けれど、黒子はどうだった?
黒子は俺の目がどうにかしていない限り、ちゃんとジャージを着ていた。
そのジャージは、掴まれたあとだとかどこかが濡れているだとかは全然なかった。
どこをどうみても乱れておらず、いつも通りきちんと着込まれていた。
つまり、白鷺さんの言っていた“ついさっきまで犯されていた”という証言はおかしいんじゃないか?って。
だって、今のまままで教われていたのなら黒子のジャージもはだけるなりしている筈なのに、言い方は変だけど黒子は綺麗なままだった。

全く喋らない水戸部先輩は、俺達の前で一回だけ、本当に一回だけ、言葉に出してこう言った。
「黒子は、何もしてない。」って。
顧問の武田先生は、こう言ってた。
「信じたいものを、本当の仲間を信じなさい。」って。
最初は何もしていなかった伊月先輩も、こう言ってた。
「俺は間違いに気づいただけ、勇気を出しただけ。ヒントはいくらでもある。」って。

冷静に考えれば、白鷺さんの証言に反論できる分の材料はどんどん揃ってくる。
一つは白鷺さんの格好と黒子の格好の違い。
片方が全裸に近く、片方がきっちり着込んでいる事。
一つは白鷺さんと黒子の体制。
座り込んでいた白鷺さんと、立ちすくんでいた黒子。
皆が来たから犯していた白鷺さんから急いで離れたというには不自然すぎる体制。
一つは白鷺さんと黒子の距離。
白鷺さんが部室の真ん中に居るのに対して黒子は部室の扉の背に立っていた。
冷静に考えるとその距離感はおかし過ぎる。
よく考えてみれば、二人の距離や位置等を見ると白鷺さんが誰かに犯されている所に黒子がかち合ったという状態な気がする。
文句をつけようにも、白鷺さんが今どこの高校に通っているのかわからないけれど。

ふと思った。
先輩達は、同輩達はどんな思いで、どんな理由で黒子に嫌がらせをしていたのか。

俺が黒子に嫌がらせをしてた理由の、3分の2は、白鷺さんに謝らせたかったから。
でも、残りの3分の1は完璧に嫉妬だった。
同じ1年なのに、なんでパスしか能がないお前がスタメンにいるんだってどっかで思ってた。
同じ委員会で、同じ年で、同じ練習をこなしているのになんで俺は選ばれないんだってどっかで思ってた。
帝光の幻の6人目だからって調子に乗んなって、どっかで思ってた。
今思えば、俺は許されないことをしていた。
何回謝っても、俺が黒子と同じ立場になっても許されないことをしてきた。
俺はなんて愚かなことをしていたんだろう。
今謝っても許されないんじゃないか。

でも、やるなら今しかない。
謝るんなら、今だ。
たとえ黒子が誠凛に戻ってこなくても、たとえ黒子が俺を許してくれなくても。



誰もいなくなった部室で、俺は携帯を開き





しばらく使っていないアドレス帳にある、“黒子”の文字を探した。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ