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□彼等の泣き場所
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高尾の場合




日曜日。
高尾は何となく一人で外に出て公園のベンチでぼーっとしていた。

「和成?」
「・・・・あ。のんちゃん。」
「一人で何してるんです?」

茶色い紙袋を抱えたテツノが立っていた。

「・・・・ん〜?日向ぼっこ?」
「・・・・・そうですか。」
「何?そんなに俺を見つめて。和成照れちゃうwww」
「・・・・・・・キモいです。」

巫山戯だす高尾の横にすっと、テツノが座る。

「え?どうしたの?」
「・・・・これ、あげます。」

ガサガサと袋から魚を取り出す。
そう、たい焼きを。

「たい焼き?」
「はい。暫くの間期間限定で抹茶白玉あんこ味のたい焼き出ると聞いてこれは買わねばと。」
「・・・・良いの?」
「二つ買ったので大丈夫です。」
「ありがとう!」

高尾は貰ったたい焼きの頭を齧る。

「和成は頭派なんですね?私は尻尾派です。」
「え〜・・・尻尾からって味気なくない?」
「問題ありません!ここのたい焼きは尻尾まで中身がぎっしりつまっているんですよ。」

ほらと言う様にたい焼きの尻尾の中身を高尾に見せた。

「あ。本当だ。あんこが見える。」
「で、美味しいですか?」
「うん。美味い。他の味も食べたいかも。」
「じゃあ、今度一緒に行きましょう。」
「マジで?行く!やった!のんちゃんとデート!」

たい焼きを持っていない方の手でガッツポーズをする高尾。

「たい焼き屋に行くだけなのにですか?」
「じゃ、その後俺とデートして下さい。」
「・・・・・そういうのは好きな人に言った方が良いですよ?」

高尾の言葉に苦笑いで答えるテツノ。

「俺、のんちゃん好きだよ。」
「・・・・その好きではないですよ。」
「そうかもね。でも、俺はのんちゃんが好きだよ。」
「・・・・・・僕も和成が好きですよ。避難場所を提供してあげたいと思うくらいに、泣き場所になってあげたいくらいには。」
「・・・・それって・・・。」
「・・・・・・。」

そっと、高尾の頭を撫でる。
壊れてしまわない様に優しく。

「・・・・。」
「君が望むなら僕を利用していいですよ。僕も君を利用しますから。」
「・・・・・俺は。」
「緑間真太郎を切り離せなくてつらいのなら、揺れて崩れてしまいそうなら私が支えてあげます。迷ったら迷わない様に手を握ってあげます。一人が嫌なら一緒に居てあげます。だから僕の前では辛い時には笑わないで。辛いなら辛いと、悲しいなら悲しいと言っていいんです。泣いていいんです。」
「・・・・のんちゃん、は、俺を捨てない?」

頬に移動したテツノの手を高尾が握る。
その手は震えていた。

「和成が望むなら私は傍にいます。」
「・・・俺、もう失うのは嫌だから重いよ?」
「問題ないですよ。良く言えば一途にずっと見てもらえるって事でしょう?」
「多分。前より嫉妬深くなってるかも。束縛もすると思うよ。それでも離れて行かない?」
「僕も嫉妬深いですよ。」
「・・・・・俺、無理矢理だけど男に何回も掘られてるよ?童貞だけど非処女だよ?」
「・・・・今それ言いますか。・・・・女性は私が初めてなら問題ありません。」
「・・・・・・抱きしめても良い?」
「どうぞ。・・・・もうとっくに君に抱きしめられていますが。」

いつの間にか高尾に抱き込まれていたテツノが高尾の背中に腕をまわして抱きしめ返す。

「・・・・・ごめ・・・・暫くこうしてていい?」

ぎゅっと、テツノを抱きしめている腕の力が強くなる。

「好きなだけどうぞ。」
「・・・・ありがと。」
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