performance

□収まらない衝動
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ひゅぅ、と風が吹く。
その風は、俺の体の傷を痛ませる。
じわり、と制服に血が滲んでいく。ああ、痛い。
金髪、という派手な髪色のおかげで喧嘩には慣れているものの、集団リンチは慣れてない。
いや、むしろ慣れないのが普通だろう。
俺は自嘲気味に笑い、体に包帯を巻いていく。
ミイラ男みたいだな、とクツクツ笑えば、殴られた腹がズクンと痛む。
服で隠れている場所は、もう正常な肌色がないくらいに醜く汚れていた。
あぁ、気持ち悪い。吐きそうだ。今日はもう、サボってしまおうか。
なんとか鞄を持って屋上に避難したことは正解だったらしい。
俺は痛む体に鞭打ち、鞄を手にとって玄関に向かった。



俺は逃げていた。
静岡から逃げてきて、今東京にいるっていうのもおかしな話だけれど。
喧嘩慣れはしてるはずなんだがな、と笑ってみれば傷が痛む。
今じゃ歩くことすらやっとのこの体。前は髪型のせいで絡まれたっけな、と思い、俺はコーンロウにしていた髪をほどいた。
前髪長くなってるな、これだったらただの根暗な高校生じゃねぇかよ。
どれくらい歩いただろうか。
ふと顔を上げると、そこには「正邦高校」の文字。
ここまで来たのか、と俺は苦笑する。
まあいい、ココの向かいの公園で一休みしよう。
痛む足を引きずりながら、公園のベンチ目指して俺は歩いて行った。



「あれ、お前・・・帝光の・・・?」

唐突に声をかけられ、灰崎はビクリと体を震わせる。

「え、え?」

顔を上げてみるが、やはり見覚えはない。
金髪だな、ああ、でも黄瀬の方が明るい黄色で目がチカチカするんだよな。
とボンヤリ考えている灰崎に、金髪の男はさらにこう続けた。

「やっぱそうだ、帝光の灰崎祥吾でしょー?」
「え、あ、はぁ・・・今は高校生っすけど。」

やけに間延びした喋り方。
よく見れば、声をかけてきた少年の体は傷だらけだ。

「俺、正邦の春日隆平っての。よろしくー。」
「あ、はい。灰崎祥吾っス・・・福田総合の。」

へらっと笑う春日につられ、灰崎も小さく笑った。
それから二人は、お互いの“今”を語り合った。
まさか自分の他に、“白鷺美姫”にハメられた人間がいるとは思わなかったのだろう。
二人はすっかり意気投合し、灰崎は福田総合から逃げている間、春日の家に世話になることになっていた。
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