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□TOP 涙の理由
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世界は救われた。
救ったのはあたしたち。
世界は救われた。
わたしは救われた?



昼下がりのトーティス。時間も時間なので、どの家からも香ばしい料理の匂いが漂ってくる。風が匂いを運び、その風と一緒に、何かがやって来た。奇抜な服装にピンクのポニーテール。深紅の瞳は煌々と輝き、悪戯っぽい表情を浮かべている。体は何かに乗って宙に浮かんでいて、どうやらそれはサドルの付いた箒らしい。

時空英雄の1人
名をアーチェ・クライン。
魔術を操るハーフエルフで、その腕はアセリア随一と言っても過言ではない程の腕前を持つ。
可愛らしい容姿からは想像も付かない程に強力な力を持っているのだ。

「くんくん…。おっ?」

鼻を犬のようにひくひくと二度鳴らし、それを合図のように地面に着地。
慣れているのだろう。着地して箒を片手に持ち変える動作が一連の流れのようだった。
着地場所はとある民間の前。質素な外見だが、意外と丈夫そうだ。アーチェは何の躊躇もなくして扉に手をかけ大っぴらに開き、満面の笑みで言った。

「マイルおばさん!!今日はシチューハンバーグだね?別々に感じさせようとしたみたいだけど、まだまだ甘いよ?煮込むと出るこの深みは隠し切れてなかったみたいだね♪」

突然の訪問者に驚くもせず、にっこりと微笑んで「生活よ」と言う彼女はマイル=セレナーデ。半年前に夫を亡くして、済んでる場所も追いやられ。そこですがりつくようにこのトーティスにやって来た女性だ。
「やっぱりアーチェの鼻はどうやっても誤魔化せないわね…。今回は自信があったんだけど」
「甘い甘いっ♪こう見えてもアーチェさんは旅の際に称号【グルメマスター】を取得した経験アリなんだよ?舐められちゃ称号が泣いちゃうねっ☆」
当然、アーチェはその称号の最後に【?】が付いていた事は忘れているのである。いや、知っててあえて隠しているのかも知れないが、そこは定かではない。
「まっ、とにかく今日もあたしの勝ちだね!シチューハンバーグご馳走様でーす♪」
 

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